「バーチャル世界」で希望格差を埋める若者たち 「努力が報われない仕事」が早々に見切られる訳

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昔は、その多くは、リアルな世界でも定職を持ち、趣味の一種として別の世界を楽しんでいる。つまり、努力が報われる場をリアルとバーチャル、2つ持っていると言えただろう。もちろん、今でもそのような人も数多くいることは確かである。

「いいね」の数で評価を実感

ただ、平成を経て令和となった今では、「マニア」の世界は、ゲーム世界と同じように、「成功体験」をリアルで得られなかった人にとって、その体験をバーチャル世界で埋め合わせる機能を持つようになっている。

それは、インターネット世界の発達と関連している。特殊な趣味を持つ人であっても、同じ趣味の人とつながりやすくなり、ネット上でのコミュニティが作りやすくなる。すると、共通の趣味を持つ人たちの間で、お互いの努力を認め合う場が形成される。

リアルな仕事の世界では、お金をメディアとして、努力が報われるということが実感できる。努力の成果は収入という形で確かめることができる。

それと相似形の構造として、ネット・コミュニティの世界では、いわゆる「いいね」というコメントのヒット数がメディアとなる。ネット上で読まれ肯定的に評価されるしるしである。「いいね」がたくさん得られれば、自分の趣味上の努力が評価されたという実感を得ることができる。

まさに現実世界では埋まらない格差を、バーチャル世界で埋めることで、生きていくための「希望」をつなぐことができるのである。

                       (構成・中島はるな)

山田 昌弘 中央大学 文学部 教授

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やまだ・まさひろ / Masahiro Yamada

1981年、東京大学文学部卒業。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。

親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行っている。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。また、「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。『結婚不要社会』、『新型格差社会』、『パラサイト難婚社会』など著書多数。

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