読み終えてから、このあと日大はどうなるだろうと考えた。すでに志願者も入学者も減少局面に入っている。もうかつての盛運を回復することはないだろう。田中英壽のようなタイプの「親分」が登場してきて、巨大組織をある種の人間的「魅力」によってとりまとめるということはこの先もう起きないだろう。ということは、16学部86学科7万人の組織を維持することは難しいということである。
冒頭に書いた通り、民主的でかつ効率的な組織が存立可能なのは、サイズが小さいということが条件である。
巨大組織は独裁的でなければ効率的には運営できない。そして、組織の独裁者であるためには「自己利益よりも公的利益を優先させる人」であり、「話のわかるいい人」であると思われていることが必要である。そして、その条件を長期にわたって満たし続けることは誰にとってもほとんど不可能なのである。
いま日本の組織はもうある程度以上のサイズであることができなくなっているが、それは人間の「粒」がそれだけ小さくなったということである。もう独裁者の仕事が果たせる人間がいなくなったということである。そして、過去30年にわたる日本の衰微の主因はそれだと私は思っている。
日本の組織の象徴
これから先、どんな業態であれ、日本の組織が生き延びようと思ったら、サイズを小さくするしかない。これが私からの提言である。別に書評は評者からの提言を書くためのスペースではないので、私の意見など無視してもらってもちろんかまわない。
だが、本書をきっかけにして多くの読者は日大という組織について興味を抱くことになったと思うので、その関心を持続して「日大はこれからどうなるか」を注視していってほしいと思う。ある意味で日大というのはその学校名が期せずして暗示したように「小さな日本」なのだから。
そういう前提で読むと実に味わい深い一冊である。
(敬称略)
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