魑魅魍魎うごめく「魔窟」
「ドラゴンクエスト」の世界では、ラスボスを倒すと闇の支配は終わり、世界は光を取り戻してモンスターたちは消え去る。日本大学の場合はどうか? 悪の首領が脱税の容疑で逮捕されるも、アメフト部の薬物事件に見るように、大学の腐敗と混迷は終わることはなかった。
まさに「魔窟」である。
ノンフィクション作家・森功の最新作『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』は、タイトルが示す通り、法律学校として誕生した日大が、戦後、マンモス大学に発展し、不祥事にまみれた今日までを書いたものだ。
著者の森はこれまでに、Netflix「地面師たち」のモデルとなる人物を追った『地面師』や、『バブルの王様』(トランプタワーを買い占めた男・森下安道や地上げの帝王・早坂太吉etc)、『泥のカネ』(裏金王・水谷功や伝説の談合屋・平島栄etc)、『許永中 日本の闇を背負い続けた男』など、日本社会の裏でうごめく魑魅魍魎を活写するノンフィクションを多数発表している。
その森をして「魔窟」と呼ぶのが日大だ。そして16学部86学科の大学にあまたの系列高校や付属病院、120万人ものOBを抱える日大に巣食う首領が田中英壽(2024年死去)であった。
田中はもともと相撲部の監督として知られる人物であったが、2008年に大学の理事長に就任すると、六代目山口組や住吉会のトップと一緒に撮られたとされる写真が出回るなど、黒い噂の耐えない人物となっていった。この大物ヤクザと撮られたとされる写真は、田中の裏社会とのつながりを示すだけでなく、日大利権の大きさ、それを理事長として牛耳る田中の絶対権力を表していよう。
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