民主的運営がきわめて難しい規模の組織
いろいろな方が本書を書評されると思うけれど、現役の大学理事が書評するのは珍しいことだと思う。私は医療系私立大学の理事を13年勤めている。その前は公立大学で8年、私立大学で21年教員をしていたので、「大学というもの」についてはそれなりに観察してきた。
その経験を踏まえて、いきなり結論めいたことを言ってしまうことになるが、日本の私学の場合「ガバナンスが効いている」というのは、「トップが独裁的だが、割とフェアで目配りがよい」ということとほぼ同義である。言い換えると、「民主的に運営されている」ということと「ガバナンスが効いている」ということを並列させることは、こと大学についてはなかなか(すごく)難しいということである。
サイズの小さな大学だったら可能かもしれない。現に私の勤めていた神戸女学院大学はたいへん民主主義的に運営されていたが、なかなか効率的に機能していた。学生数2500人くらいの小さなミッションスクールだったからそれも可能だったのだと思う。でも、サイズが大きくなると民主的な合議でものごとを決めてゆくというのは難しい。たいへんに難しい。
本書の考察の対象である日大は日本一のマンモス私大である。16学部86学科、学生数7万人である。私の経験則に従うなら、民主的な運営がきわめて難しい規模の組織だということである。事実、日大にはその歴史の中にきわだった2人の独裁者を数える。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら