電力市場の相場操縦でJERA「不正の意図はない」 規制当局が認定、JERA幹部「現場把握に課題」

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──2020年12月から2021年1月にかけて、JEPXでは需給逼迫が発生し、史上空前の高値取引が頻繁に生じました。その後、電取委は当時、JERAを含む大手電力会社が正しく売り注文や買い注文を出していたかを検証し、その結果として売り惜しみなどの不正は確認されなかったとの判断を示しました。今になってみて、果たしてその判断は正しかったのか、疑問も生じています。JERAでは当時、電取委のアンケートに正確に答えていたのでしょうか。

当時は、液化天然ガスなどの燃料制約により発電機を十分に稼働できないといった問題が発生していた。そうした中で安定供給のために精一杯の努力をしていたと認識している。発電できる最大量はここまでであるということはしっかり報告している。

──JEPXの価格高騰が原因で多くの新電力会社の経営が悪化し、倒産や撤退が相次いだことと、JERAによる相場操縦の間に関連性があるのではとの指摘もあります。市場価格を基準にして電気料金を決めている会社もあり、顧客にも影響が及んでいるとも考えられます。不当に得た利益を返還すべきとの指摘もあります。

われわれとしては利益を得ることを意図して未供出があったとは考えていない。そのため、ご指摘に対しての直接のコメントは差し控えたい。

「3線管理」を徹底し、再発防止に力点

──JERAは2024年12月12日、電取委に再発防止策を提出し、その概要をニュースリリースとして発表しました。今後どのような取り組みをしていきますか。

先ほど述べたように4年半にわたって十分な電力を市場に供出できていなかったことを非常に重く受け止めている。そのうえで再発防止のために、さらなる仕組みの構築と、社内風土の醸成に努めていきたい。

仕組みの構築では「3線管理」の導入を通じて、ガバナンス体制を強化する。「1線」である現場においては、市場のルールをしっかり確認しながら取引をしていく。そのうえで「2線」として市場取引管理室という組織を2025年1月に新設し、現場である1線とともにPDCAを回していく。さらに「3線」である内部監査部とともに実際のオペレーションが適切に実施されているかを確認する。

従来、2線として法務や経理、調査といった部署があったが、市場取引に特化した部署はなかった。今回はその領域に専門部署を設け、再発防止につなげていく。

具体的にはJEPXでの取引のほかに、需給調整市場や容量市場といった市場で適切に取引をしているかについても確認していく。

また、最上位の規定として取引方針のようなものを定めているが、現場の実務に落とし込むうえでの明確性がやや足りなかった。誰が読んでもわかるようなルール化も進めていきたい。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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