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電力先物で日本もエネルギー市場の中核へ成長か リスク上昇と取引者の多様化で電力先物急増中

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急成長が続く日本の電力先物市場。その背景には2つの大きな要因がある。

気候変動や再エネ普及で電力の先物取引はますます活発になっている (写真:Annie Mulligan/The New York Times)

日本の電力先物取引が急増している。筆者も参画する欧州エネルギー取引所(EEX)が運営するJapan Power(日本のスポット電力市場の月間平均価格を参照して差金決済する金融商品)の出来高が今年前半で昨年全体の1.5倍超の29テラワット時に上った。2月には単月で過去最高となる6.6テラワット時を記録し、7月も酷暑を背景に6テラワット時と活況を呈している。日本全体の電力消費量が月間平均で約70テラワット時とすれば4年で実需給の1割弱の規模に成長したことになる。

日本の電力先物全体に占めるEEXのシェアは、今年前半で98.5%なので、日本全体の市場規模が拡大しているといえる。

電力先物とは、差金決済を前提に将来の電力を売買する金融商品で与信リスクを回避するために清算機構を介する取引である。かつて、各地域の電力会社が独占的に最終需要家に電力を販売していた時代には、需給に関係なく電力会社の総括原価に一定の利益を乗せて価格が決まっていた。

気候変動で電力価格のリスク上昇

しかし電力自由化後、価格は需給に基づき事業者間の競争で決まることになり、大きく変動するようになった。先物取引は、不確実な将来の価格をあらかじめ固定化して経営を安定化させられる。

急拡大の背景には2つの要因がある。1つは、電力価格の不確実性(市場リスク)の高まりだ。電力価格は需給によって決まるが、需要と供給の両面で不確実性は高まっている。需要面では、地球温暖化に伴う天候の激化・不安定化が影響している。例えば、今年3月は気温が安定せず、月内で最高気温が10度を切る日もあれば20度を超える日もあった。

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