安保法案採決、「デモの熱」が官邸を焦らせた 意表を突く「前倒し」で参院は大混乱

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16日前も国会前に多くの人々が集まった(September 16, 2015. REUTERS/Yuya Shino)

孫子の兵法に「その無備を攻め、その不意に出ず」というのがある。簡単にいえば、敵が考えもしないところに注目し、意表を突けということ。自民党の今回の動きは、この兵法そのものだ。9月15日午後、参院議員会館で取材していたところ、たまたま会った自民党関係者から「与党は安保関連法案を明日通すらしい」と聞いた。

同法案に関しては、「16日に地方公聴会が開かれ、17日に参院平和安全法制特別委員会で採決され、18日には本会議にかけられ成立する見込み」とのスケジュールが報道されていた。それが「16日に本会議が開かれ、そのまま『休憩』。午後の横浜での地方公聴会の後、鴻池祥肇委員長と他委員が国会に戻ってきて委員会を開催。採決の後、本会議で通す」(同関係者)というのだから、スケジュールが大きく早まったことになる。急ぐ理由は何かと聞くと、同関係者は「どうも官邸から『早めたい』と言ってきたようだ。昨日の国会デモがショックだったらしい」と説明した。

デモの盛り上がりに焦った

「昨日の国会デモ」とは、14日の夕方に4万5000人(主催者発表)が国会周辺を取り囲んだ件だ。参加者は口ぐちに、「戦争をさせない」「9条を守れ」と安保関連法案の廃案を訴え、岡田克也民主党代表と志位和夫共産党委員長、吉田忠智社民党党首など野党の党首も政府の対応を批判する演説を行った。その他、共産党から市田忠義前書記局長と小池晃政策委員長、社民党から福島みずほ前党首、生活の党と山本太郎となかまたちからは玉城デニ―国対委員長も参加している。

「19日からのシルバーウイークに入ってしまうと、確実に全国各地で多くの反政府デモが開催される。その前に片づけておいて、熱を冷ましたいのだろう」(同関係者)

だがそうするにしても、自民党としては「強行採決」というイメージはなんとか避けたい。

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