安保法案採決、「デモの熱」が官邸を焦らせた 意表を突く「前倒し」で参院は大混乱

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そこで新党改革、次世代の党、日本を元気にする会の3党と修正協議を行い、彼らが主張する自衛隊をホルムズ海峡に派遣する場合に国会の事前承認を要件にすることなどを受け入れた。

ただし条文に手を加えず、閣議決定して付帯決議として盛り込むことにした。衆院で再度審議することを避けるためで、自民党としては可能な妥協だ。3党の議員14名を味方にすることで、「強行採決」の汚名を阻止できた。ただし維新の党との修正協議は決裂しており、民主党や共産党などとも対立したままだ。

そのため、15日に理事懇を開いても、16日の日程がまとまらなかった。鴻池委員長が職権で「16日午後6時」に平和安全法制特別委員会の開催を決定したが、これには「採決」が含まれていない。しかし民主党など野党には「一気に採決までもっていき、本会議で成立させるらしい」との情報が広がった。これに、どのように抗うか。「野党は第1委員会室にバリケードを作って審議を阻止するらしい」「鴻池委員長を地方公聴会の会場に閉じ込め、国会に戻れなくするらしい」「国会に帰ってきたところで、委員会室に入れないように閉じ込めるらしい」などの噂が流れた。

確かに鴻池委員長に対する「妨害行為」はあった。地方公聴会が終わった後、会場から出る車を群衆がブロックし、中にはその前に身を投げ出して動きを阻止する人もいた。だがこうした事態は予想されていたため、鴻池氏はいち早く会場を脱出し、午後6時前には参議院に到着している。一方、混乱に巻き込まれて予定の新幹線に乗り遅れた民主党の北澤俊美元防衛相や福山哲郎元官房副長官も、午後6時半に第1理事会室に入った。

理事会室の前では怒号

第1理事会室と第1委員会室は数メートルしか離れていないが、その空間には多数の与野党議員や記者、カメラマンがひしめいた。人の熱気に加えてカメラの照明で、そのスポットだけは気温が30度を超えていた。さらに「実力行使なんて、恥ずかしいだろう!」「ここは言論の府だからな!」など理事会室の前では怒号が飛び交い、委員会室の前で与党側の議員が「民主党なんて全員議員辞職してしまえ」と叫んでいた。

さらに首にピンクのリボンを巻いた女性議員がこれに加わった。民主党の神本美恵子参院議員、郡和子衆院議員、西村智奈美衆院議員の呼びかけで集まった民主党と共産党の女性議員たちは、「公聴会の公述人に女性がいない。安倍政権の『輝く女性』政策に逆行しているのではないか」と理事会室前で訴え、「女性の声を聞け!」とコールを繰り返した。

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