コタツ記事が蔓延するWebメディアに対する苦言 ノンフィクション作家が説く現代の「書き手」論
こちらが出した企画に対して、これを組み合わせたらどうかと企画をより深める提案をくれるわけです。例えば、中森明菜さんを取り上げたいとき、彼女だけでなく、陰と陽の対比で松田聖子さんと中森明菜さんを一緒にやったらどうかと。太陽と月のように対比がはっきりしたほうが彼女たちの個性がより浮き彫りになるし、読み手を惹きつける内容になります。ここで得た企画の視点は、別ジャンルの取材でも生きてきます。
このような仕事論を、数日おきに出版社の垣根も越えて編集者たちと集まり、夜通し酒を飲みながら語り合いました。みんな根底には文芸やノンフィクションが好きな気持ちがあって。今自分が持っているスキルはそういった環境の中で培われてきたものです。
もちろん、ただ教えられるものをやるだけでなくそれ以上のものを作っていく意識で、常に自分が成長できるテーマは何か、次につなげられるものは何かと考えてやってきましたし、やらせてくれた環境が大きかったと思っています。当時は編集部できちんと人を育てる役割があったわけで、僕は多分すごく恵まれていた最後の世代だと思うんですね。
ひとりでは限界がある
しかし今は、出版不況も含めて媒体がなくなったり、先ほどお話ししたように読者が求めてないとか、そういった中で書き手を育てていく環境がなくなってきつつあります。
育てる環境がないからダメだという出版社やメディアの責任では絶対にないですが、ステップアップにはどうしても1人だと限界があるんですよね。取材手法や文章表現力、企画について体系立てて学んだり深めたりする場所というのが少ないんですよね。
―そのような状況で執筆されたのが『本を書く技術』ですね。
僕自身が編集者から教えてもらったり、やりながら現場で学んだりしたことを体系立てたいなと思ったのが今回の本です。一連の本を書く流れを可視化させて、本当にやりたい方が参考にできるものになればいいなと思っています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら