「高くなったディズニー」に抱く"寂しさ"の正体 テーマパーク化していく狂った街の生き抜き方

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実は私はこうした「選択と集中によるテーマパーク化」を「ニセコ化」と名付け、最新作である『ニセコ化するニッポン』においては、この「ニセコ化」が日本中に広がっている、と述べている。観光地や都市、さらには商業施設に公共空間まで、この「ニセコ化」が日本を覆っている。

大規模な再開発が進んでいる「渋谷」

東京でも、そのような変化はすでに起こっている。

ニセコ化するニッポン
『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

例えば、近年の「渋谷」の変容もまた、「ニセコ化」として捉えることができるのだ。現在、渋谷は「100年に一度」と言われる大規模な再開発が進んでいるが、その目的の1つは「渋谷を『大人の街』」にすることだ。

開発の大きな主体である東急は、もともと「若者の街」として知られていた渋谷について、近年集まり始めていたビジネスパーソンや、インバウンド観光客に向けて街を作り替えている。

実際、そこに誕生している高層ビルに入居するテナントの多くはお高めの店が多いし、オフィスやホテルが入居して、若い人がいる街ではなくなってきた。ここでも、「選択と集中」による空間の変容が起こっているのだ。

よく「渋谷はもう若者の街ではない」なんて言葉がメディアを騒がせることがあるが、本質的には「ニセコに起きている変化」と同じなのだ。

ここではいくつかの例を見てきただけだが、こうした「ニセコ化」は都市や観光地、さらに商業施設までさまざまな場所で進んでいる。

もちろん、私はそれを否定しない。ただ、気をつけるべきは「選択と集中」には、必ず「選ばれなかった人」が生まれるということだ。

ニセコにおいて「地元民がないがしろにされている」と感じられるように、その裏には「排除」が伴う。ディズニーリゾートだってそうだ。そして、一度愛着を失うと、人々はもう心を向けてくれないのである。

テーマパークのようになっていく東京、あるいは日本を私たちはどのように生きていけばよいのか。そして、ビジネスを展開する企業も、どのように戦略を組み立てていくのか。私たちは今、問われているのだ。

連載の次の記事はこちら:「インバウン丼」食べない人にも批判された深い訳 テーマパーク化するニッポンに、どう向き合うか

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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