興味深いのは、この変化は空間にも表れていることだ。
ニセコを訪れてまず気付くのは、そこには英語の看板ばかりが目立つこと。空き地の売却を示す看板には「For Sales」とあるし、お店のメニューも英語が多い。
そこら中に建っているコンドミニアムは外国人向けの作りになっていて、日本の住宅では見ないような景色を作り出している。
聞いた話によれば、働く従業員は日本人であっても英語ばかりを使うというから、まるでそこは「日本であって日本でない」、ある意味「テーマパーク」のような空間になっている。
しかも、それは裕福な外国人観光客に向けられたテーマパークである。まさにある種の「排他性」がそこを支配している。
ニセコが観光地として成功しているのは「選択と集中」
『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか「地方創生」「観光立国」の無残な結末』(講談社+α新書・2020年)の中で著者の高橋克英氏は、ニセコが観光地として成功しているのは、外国人富裕層に向けて「選択と集中」をした観光地作りをしたからだ、という。
ニセコの特徴は、「ジャパウ」とも呼ばれる良質なパウダースノーにあり、それに惹かれて欧米圏を中心とした外国人富裕層がやってくる。そんな彼らに向けてさまざまなサービスや取り組みを「選択と集中」してきたことが、ニセコの活況を招いた。
実際、先ほど見たニセコの空間的な特徴は、すべてこの外国人富裕層向けに「選択と集中」された結果であろう。英語の看板もそうだし、コンドミニアムの作りもそうだ。その結果として、北海道のある区画に異質な「日本でない」ようなテーマパークのような場所が出現している。
いわば、ニセコでは「選択と集中によるテーマパーク化」が進んでいる。
少し逆説的な表現になるかもしれないが、その意味ではディズニーリゾートもある意味、富裕層に向けて「選択と集中」を行う「テーマパーク化」が進んだ場所だといえるだろう。チケット代の値上げやIT弱者の排除は、こうした「選択と集中」を行うためのツールの1つなのである。
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