「キラキラ」より「そこそこ」起業が幸せになる本当 経営学者が問う「企業家になるのって幸せ?」

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考える男性
起業を志す人が増えていますが、現実はなかなか厳しいようです(写真:Graphs / PIXTA)
経営学者の高橋勅徳さんは長年、企業家研究を続けてきました。高橋さんの研究成果は大学やビジネススクールの講義に反映され、後進の研究者育成、そして学生たちの起業も実現してきました。
その一方、続けてきた研究だけでは見落としていたことがあったのではないか?という疑問が出てきたと言います。それはどのようなことなのか。高橋さんの著書『なぜあの人は好きなことだけやって年収1000万円なのか? 異端の経営学者と学ぶ「そこそこ起業」』より一部を抜粋し、お届けします。

論文に書いてこなかった"キラキラじゃない"こと

私が企業家研究を専門とする研究者を名乗り、大学の授業でベンチャービジネス論と題する講義を続けて、今年で22年目になります。気がつけば、経営学の世界でも若手・中堅を通り過ぎ、そろそろベテランとみなされる年齢と研究歴になりました。

企業家研究に取り組む後輩たち、そして企業家として活躍するゼミOBの姿を見ていると、微力であっても理論と社会の発展に貢献できたかなと、人のいないところで胸を張ったりしていたのですが……この数年、自分が取り組んできたことに「はて?」と考え込む時間が増えてきました。

私はこれまで、ベンチャー企業やソーシャルビジネスの創業者(founder)の方々の「語り」から、先行研究の議論に基づいて「理論的に意義のある(貢献できる)」内容を発見してきました。

その発見を論文に仕上げていく中で、創業者は「企業家」という学術用語に変換されます。

このように事業(ビジネス)の担い手でしかない起業家(founder)を、経済と社会を変える英雄たる企業家(entrepreneur)に変換して、その活動を第三者にも再現可能な形で提示しつつ、その存在を正当化していくことが、(私が20年余続けてきた)企業家研究の研究者に求められる社会的な役割です。

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