「キラキラ」より「そこそこ」起業が幸せになる本当 経営学者が問う「企業家になるのって幸せ?」
論文に書いてこなかった"キラキラじゃない"こと
私が企業家研究を専門とする研究者を名乗り、大学の授業でベンチャービジネス論と題する講義を続けて、今年で22年目になります。気がつけば、経営学の世界でも若手・中堅を通り過ぎ、そろそろベテランとみなされる年齢と研究歴になりました。
企業家研究に取り組む後輩たち、そして企業家として活躍するゼミOBの姿を見ていると、微力であっても理論と社会の発展に貢献できたかなと、人のいないところで胸を張ったりしていたのですが……この数年、自分が取り組んできたことに「はて?」と考え込む時間が増えてきました。
私はこれまで、ベンチャー企業やソーシャルビジネスの創業者(founder)の方々の「語り」から、先行研究の議論に基づいて「理論的に意義のある(貢献できる)」内容を発見してきました。
その発見を論文に仕上げていく中で、創業者は「企業家」という学術用語に変換されます。
このように事業(ビジネス)の担い手でしかない起業家(founder)を、経済と社会を変える英雄たる企業家(entrepreneur)に変換して、その活動を第三者にも再現可能な形で提示しつつ、その存在を正当化していくことが、(私が20年余続けてきた)企業家研究の研究者に求められる社会的な役割です。
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