同じタイミングで似たようなことを考える人はいるもので、2010年前後から海外の尖った企業家研究の研究者を中心に、ライフスタイル企業家(lifestyle entrepreneurship)という新概念が提示され、注目を集めるようになりました。
投資家やベンチャーキャピタル、取引先やお客様、更には行政組織の都合に振り回されてまで、億万長者を目指す企業家という生き方は、彼ら自身を不幸にしているだけなのではないか?
好きなことに専念したいから、会社に支配される生活を送りたくないから起業したんじゃないの? それなのに、「成長」とか「進化」とかを盾に「いらないリスク」を周りから背負わされ、取引先である会社から「やりたくないこと」を強制されていないか?
だったら、自分が好きなことを基盤に、低資本・低投資で起業して、生活の持続可能性が担保できるところで意図的に企業規模の拡大も、売上高の成長も止めてしまう起業スタイル=ライフスタイル企業家を目指すことが一番「幸せ」なのではないか?
「そこそこ起業」を解き明かしたい
ライフスタイル企業家という概念は、新自由主義が当たり前になった社会で当然のごとく受け入れられている、キラキラ系企業家像や、「イケてる」ビジネスパーソン像が実は人を不幸にしているのだという問題提起をしたうえで、会社に頼らず、振り回されず、搾取されない、解放された新しい生き方・働き方を模索する手がかりとして提示されました。
「このような生き方をする人は、ただの自営業者であり、企業家ではない!」
私が学会等で「そこそこ起業=ライフスタイル企業家」をテーマとした研究報告をすると、そういうお叱りをいただくことが多々あります。
諸先生方のそのお叱りはごもっともですが、そのように企業家を語る学者の理論が、この社会と人間を不幸にしていることの反省から、ライフスタイル企業家という考え方が提示されました。
今、この社会のどこかに存在する、「好きなことを、自分のペースで楽しみながら生きていくために起業した人たち」を肯定していく。
そのために、自営業者とみなされ、経営学の対象から(不当にも)外されてきた人たちを、新しい世界の担い手=ライフスタイル企業家フィールドから発見して、その具体的な行動を「そこそこ起業」として解き明かしていくことを、残りが見えてきた研究生活の中心に据えることにしました。
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