若宮さんが「プログラマー」という呼ばれ方に違和感を持った理由は、もう1つある。自分の活動はプログラミングだけではないことだ。
ゲームアプリの開発よりも先に、表計算ソフトのエクセルのマス目に色をつけてデザインする「エクセルアート」を考案している。ネーミングも若宮さんの造語だ。図柄を布や紙にプリントしてブラウスやバッグ、うちわを作って楽しめる。しかし、メディアにはまったく取り上げてもらえなかった。
「くだらないお遊びにしか見えないのだろうなと思いました。でも台湾のデジタル大臣、オードリー・タンさんとトークショーをしたとき、『あなたのした仕事ですごいのはエクセルアートだ』と絶賛してくださったんです。プログラミングなんて誰でもできるじゃない、でもエクセルアートは誰もやったことがないって。それからですよ、メディアで取り上げられるようになったのは。実にわかりやすい(笑)」
定年後の生きがいは「0から1」を創ること
AIが登場したデジタル化社会では、あらゆる分野で定型的なことは、すべてAIがやってくれる。これから、働き方も社会のしくみもライフスタイルも着実に変化していくだろう。
「AIは1を1億にすることはできます。でも0を1にすることはできません。戦後の日本はすでにできあがった1を持ってきて、それを1億にすることが重要という価値観でした。0をたった1にすることに労力を使うのは意味がないと。でも、AIさんが登場して、これからは私が人間の皆さんの面倒を全部見ますっていっている。だったら人間はAIに代替されないスキル、0から新しいものを創っていけばいい。0を1にすることはすばらしいことじゃないかなと思います」
企業戦士として1を1千に、1万にする生産力や売り上げで評価されてきた人たちが、定年後に生きがいを見つけるとしたら、0から1を創ることかもしれない。
「やりたいことは、とりあえずやってみる。失敗してもいい経験をしたなと思いましょう。それは、老後の行く先で大輪の朝顔を咲かせるためのよい肥料になります」
冷や汗ものの失敗はしょっちゅうという、若宮さんからのエールである。
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