「機械に介護されたい」89歳のIT強者が描く"老後" シニアは「0から1を創る」ことを生きがいにしよう

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家電も同様で、洗濯機は車いすユーザーも洗濯ものを出し入れできる。一方、日本の洗濯機は健常者仕様のため、車いすユーザーだと洗い終わった洗濯物を取り出すのは難しい。

「これも洗濯物の取り出し口をリモコンで開閉できるようにすれば解決できることです。寝たきりの人も自分勝手にテレビを観たい。だったら天井からテレビをぶら下げてリモコンで操作できるようにすれば、人手を借りずに済みます。要介護になっても自分でできる環境を周囲の人たちが作っていくことで、介護者と要介護者の双方が楽になる。介護こそ、積極的にIT化を進めるべき領域だと思います」

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それに加えて、ITと介護の両方に詳しく、介護に役立つIT機器のセレクトや初期設定、使い方を指導できる“介護情報士”的な介護士や、家庭用介護ロボットを手頃な料金でリースできるサービスなど、「モノ・人・サービスを連動させること」が重要だと若宮さんは話す。

それによって、要介護になっても住み慣れた自宅で暮らし続けることが可能になる。

さて、身体介助をしてもらうとしたら介護ロボットか、人間の介護か? 若宮さんが介護ロボットを選ぶ理由は、気兼ねしなくていいからだとか。

「手の握力が低下して食事のときに食べこぼしても、ロボットはうんざりすることもなく、文字通り機械的に片づけをしてくれます。これは高齢者の精神衛生上、とてもいいことです(笑)」

若宮正子さん
文机と座布団からなる若宮さんのワークスペース。ここでパソコン作業をしている(写真:『88歳、しあわせデジタル生活』中央公論新社刊より)

プログラミングができることが偉いのではない

7年前、「世界最高齢のプログラマー」として日本のメディアに取り上げられるたびに、若宮さんは違和感を覚えたという。“80歳すぎの老人が”プログラミングをするから偉い。そんな空気を感じた。7年前よりいっそうデジタル化社会が進んだ今も、その空気はあまり変わらない。

「私はゲームアプリを作りましたけれど、別にプログラミングをしたかったわけではないんです。年寄りが楽しめるアプリを作りたかっただけ。今はAIが出てきて、もうソースコードを書かなくてもプログラムを作れる時代が来ています。

だから、これから大事になってくるのは、どんなアプリが作りたくて、それは具体的にどういうものかという設計図が書けること。でも、日本は残念ながらこういう時代の変化から遅れています。みんなに喜ばれるアプリを作りましょうという講習で、プログラミングを教えるんですから」

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