日本の「受け身外交」では世界と渡り合えない 東アジアの新秩序を築くにはどうすべきか

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田中 均(たなか・ひとし)
●日本国際交流センターシニア・フェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1947年生まれ。京大法学部卒業。外務省に入省後、英オックスフォード大学修士課程修了。北米第二課長、北東アジア課長、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政務担当)などを歴任。2005年退官。

戦略の基本にあったのはICBM。Iはインテリジェンスの頭文字。簡単に言えば情報だ。Cはコンビクション、つまり確信を持つ。Bはビッグピクチャー、戦略の本質は大きな絵を描くこと。それにMはマイト、力の裏付けがあること。要するに、十分な情報を適切に評価して目的に確信を持ち、大きな絵を描いて力を活用し結果を出す。この四つの要素がかみ合えば戦略はうまくいく。

──交渉を手掛けた北朝鮮の拉致被害者の生還を例にとれば。

日本人拉致をそれまで20年にわたり北朝鮮は否定してきた。それを認めさせ、生存者を帰国させるにはどうすべきか。それまで実は、拉致しただろう、返しなさいの交渉を日本は12年間繰り返した。だが、何も結果が出なかった。

ICBM戦略で臨んだ。当時の北朝鮮がいちばん大事に思っていることは何か、情報評価をして、将来日本と国交を正常化すればこういうプラスがあるという絵を描く。それを実現するには拉致を認め、生存者を帰還させないかぎり、先に進まないと。米国が「悪の枢軸」と決め付けた力も効いた。北朝鮮を危険な国ではなくする大きな絵を描き、拉致の問題をその中に位置づけた。

中国との共存戦略が重要に

──安倍政権の「地球儀を俯瞰する外交」も大きな絵?

「地球儀を俯瞰する」という意味がよくわからないが、外交の目的は日本をより安寧にするためにどういう手立てで、結果を出していくか、にあるべきで、仲良くする国が多ければ多いほどいいというのは、戦略ではない。

──中国に対しては。

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中国は共産主義国であって日本と価値を同じくするわけではない。だが、経済をはじめ相互依存関係が強くなると、共存の戦略が重要となる。日米安保体制で抑止力を維持するとともに、信頼関係が必要だ。それには歴史認識問題の克服もある。

50年には東アジアが世界のGDPの5割を占める。5割以上のエネルギーをこの地域で消費し、壮大な争奪戦となる。今のうちからエネルギーや環境保全などの問題で協力体制を作る。そういう協力関係にはそれぞれ違った国が入ってくるかもしれないが、全体から見れば重層的な機能主義という言葉の中で目的を達成していくことが大事だ。

──外交官の役割は。

政治の官僚に対するグリップがたいへん強くなっている。官僚がプロフェッショナルとして客観的な意見具申ができるよう官僚の中立性を担保する仕組みを作っておかないといけない。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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