入居申し込み殺到する"天空の廃墟"圧倒的な魅力 団地を借りたい人たちが夢見ているもの

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それほど離れているわけではないのに都市の賑わいからすっぱり切り離された異空間。それが「今いる場所ではない、どこかに行きたい願望」に火をつけているのかもしれない。

もう1つ、このところ、まちづくり関連の取材先でよく聞く「村を作りたい願望」も秘められているのではないかと感じている。村といっても地方自治法でいうところのものではなく、もう少し小さな、顔の見える関係で成り立つ集落といったようなイメージだろうか。

従来の集落と異なるのは地縁、血縁でつながる関係ではなく、生き方や目指すものなどへの共通性、共感で緩くつながるような集まりであること。住所、年齢、勤務先や家族構成まで全部筒抜けの従来の地域団体とは一線を画す、なんだったらハンドルネームだけの関係ながら皆で目指すものに関しては強いつながりを持って動くーー。

過干渉と没交渉の「ちょうどいい中間」

ここ数年日本のあちこちの取材先で聞く「村」はおおよそそうしたもののようで、非常に雑駁な言い方をすると地方に多いとされる過干渉な関係、都市の特徴のように言われる没交渉な関係のちょうど中間くらいの関係性というところ。これまた雑に言うと、「ほどよい距離感の、居心地のいい人間関係のある集落を作りたい、そうした人間関係の中で暮らしたい」と言い換えてもいいのかもしれない。

その観点からすると月見台は互いの顔と名前が一致するくらいの規模であり、そもそもこの場所に関心を持ち、何かやってみたいと思う時点で方向性は近しいと推察できる。これまでにない場所で、これまでと違う仕事に挑戦し、そこで新しい関係を紡ぎたい。月見台再生への期待がかなり大きい人たちが集まってくるわけだ。

今後も現地でのイベントなどの開催予定はあり、まだ申し込みのチャンスはある。人生をちょっと変えてみたいと思ったら試してみる手はあるだろう。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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