大切な人の喪失「悲しみと後悔」にどう向き合うか 悲しみとうまく「距離をとる」方法は人それぞれ

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そうすることで、どうしようもなくつらい時間を多少なりともやりすごせるかもしれません。

悲しみから離れることが、以前の日常の感覚をわずかでも取り戻すことにつながるように思います。

自分なりのやり方で、悲しみとうまく距離をとる方法を知ることは、これから先、悲しみとともに生きていくあなたを支えてくれるでしょう。

働いている間は妻のことを考えずにすむ

妻を亡くした60代の男性は、こんな行動をとられたそうです。

「葬儀の翌日から仕事に行っています。周囲は驚きますが、働いている間だけは妻のことを考えなくてすむんです。妻が亡くなったことを夢のように思うこともあって……。今は仕事があってよかったって思いますね」

この男性のように、仕事に没頭することで気をまぎらわすのも、悲しみとともに生きていくための一つの知恵です。

ただ、心身ともに疲弊しているときにはあまりおすすめしません。忙しくしすぎることは大きな負担になりかねないからです。その点は留意する必要があるように思います。

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また、人によっては、亡き人を思い出すことや、思い出させるような物や場所などを極度に避けようとしている場合があります。

「考えない」時間、悲しみから距離を置くことは大切であり、一時的であれば、こうした回避的な行動は問題ないように思います。

しかしながら、自分の気持ちにふたをして、現実に直面することをことさらに回避しようとすることは、結果的に悲嘆を長引かせる可能性もあります。

自分のペースでかまわないので、少しずつ悲しみに向き合っていくことも考えてもいいかもしれません。

人生を前向きに生きることは大切であるとよくいわれますが、前向きになることにこだわらず、しばらくは後ろ向きのままでもいいと思います。

崩れそうな自分自身をこらえつつ、なんとか日々の生活の中で今の自分にできることをだましだましこなしていくうちに、結果的に物事が好転することもあるのではないでしょうか。

(まとめ)「1時間だけ」「今日だけ」考えないようにする。その積み重ね
坂口 幸弘 関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」センター長

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さかぐち ゆきひろ / Yukihiro Sakaguchi

関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」センター長、同大学人間福祉学部人間科学科教授。専門は臨床死生学、悲嘆学。
30年近くにわたり、死別後の悲嘆とグリーフケアについて研究・教育にたずさわる一方、ホスピスや葬儀社、保健所、市民団体などと連携し活動してきた。

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赤田 ちづる 関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」客員研究員

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あかだ ちづる / Chizuru Akada

関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」客員研究員。
上智大学グリーフケア研究所、関西学院大学大学院人間福祉研究科で学んだのち現職。
研究のかたわら、主に関西を拠点として、グリーフケアの実践活動や支援者の養成に広く取り組む。

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