では、なぜ月の北極ではなく、南極なのでしょうか?
月の北極や南極は「日当たりがいい」といいましたが、私たちが日常でイメージする日当たりのよさとは異なります。太陽の光は上から照り付けるのではなく、横から差し込みます。
月面には、クレーターという凹凸があちこちにあります。月の北極や南極にあるクレーターの穴のなかでは、太陽の光がまったく差し込まない場所が存在するのです。
こうした場所は、永久に日が当たらず影になっていることから、「永久影(えいきゅうかげ)」と呼ばれています。
日当たりが悪すぎる場所の近くがいい
永久影は、1年中どころか、何百年、何万年、いや、なんと何億年にもわたって、太陽の光が当たっていない「日当たりが悪すぎる」場所です。
マイナス200℃を下回るようなところもあり、月面でキンキンに冷え続けている場所なのです。
この永久影には、「凍った水」が存在すると期待されています。
月面は、水気のない、カラッカラに乾いた土地です。そこに、なんらかのプロセスで水分子が発生し、キンキンに冷えた永久影にピタッと凍りつき、何億年にもわたってコツコツ蓄積している可能性があるのです。
永久影の領域は北極よりも南極のほうが広く、2018年の研究でも、南極のほうに水が集中していそうな観測結果が出ています。
「スペースXが狙う『100万人火星移住』実現可能か?」でお伝えしたように、月面での水は、一石三鳥にも四鳥にもなる重要な役割があります。
地球から月まで水を運んでいければいいですが、そうすると水1kgあたり1億円もかかってしまいます。金1kgが約1500万円なので、月面での水は金よりも貴重なのです。
人類が月面基地をつくるうえで最もいいのは、年間を通して日当たりがよくて電力の確保ができ、かつ、近くに大量の水がある場所です。
ふだん私たちが住まいを選ぶ際にも、日当たりがよくて、必要なものが手に入りやすい場所のほうがいいですよね。それと同じです。
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