働く人は誰もが知るべき「比較優位」という重要概念 交易が経済発展をもたらしたのには理由がある

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砂漠を行くラクダの隊商
シルクロード交易は、相対的な優位さ(「比較優位」)を活かしたものであり、絶対的な優位さにもとづくものではありませんでした(写真:ziggy/PIXTA)
私たちが生きている、かつてないほど豊かなこの現代社会を可能にしたのは、経済の力だ。そして、文明の歴史は経済発展の歴史でもある。では、その経済を、経済学者たちはどのように考えてきたのか。現代の経済学者は何に取り組んでいるのだろうか。
農耕革命から人工知能まで、経済や経済学の発展の歴史をわかりやすく解説する、2024年12月に刊行された『読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

貨幣の持つ3つの機能

読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史
『読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

多くの古代社会で生まれた発明品のひとつに、貨幣がある。貨幣は次の3つの機能を持つ。

(1)さまざまな品物の価値をいい表す「尺度」としての機能。貨幣があれば、牛2頭には斧1本の価値があるとはいわず、どちらも銀貨1枚の価値があるといえる。

(2)富を腐ったり、死んだりしない形で蓄えておける、価値の「保存」手段としての機能。

(3)「交換」の手段としての機能。貨幣を使えば、牛2頭を買いたいが、それと交換する斧を持っていないという人どうしのあいだでも、容易に商取引ができる。

貨幣はさまざまな形態で誕生した。古代ギリシャでは、前700年から前600年頃、のちにドラクマ(「ひとつかみの」の意)と呼ばれるようになる硬貨が発行された。

古代オリンピックの勝者には、オリーブの葉で編まれた冠のほかに、最高1000ドラクマの賞金が贈られたという。

ローマで貨幣が発行されるようになったのはそれより遅いが、前269年、ユーノー・モネータ神殿の近くで銀貨の鋳造が始まると、その銀貨には「モネータ」の文字が刻まれ、それが今の「マネー」の語源になった。

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