古代世界で「庶民の生活」が苦しかった意外な理由 発明をもらたす「インセンティブ」という視点
農耕革命から人工知能まで、経済や経済学の発展の歴史をわかりやすく解説する、2024年12月に刊行された『読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
労働生産性の劇的な向上
先史時代には、人工的な光源はたき火しかなかった。
もしその頃のわたしたちの祖先が、現在の家庭用の電球1個から1時間に発されるのと同じ量の光を作り出そうとしたら、58時間かけて薪を集める必要があった。
古バビロニア王国〔前1900年頃~前1595年〕の時代には、ごま油のランプが最先端の照明具だった。
前1750年頃のバビロニアの労働者がそれだけの光量を生み出そうとしたら、41時間働かなくてはならなかった。
やがて、蝋燭が登場した。当初は獣脂製で、これは作るのにたいへんな時間がかかった(しかも臭いがひどかった)。
18世紀末ですら、電球1個1時間ぶんの光を放てるだけの蝋燭を作るには、5時間を要した。
19世紀に入ると、ガス灯が開発され、電球1個1時間ぶんの光を生み出すのに必要な時間は2、3時間にまで減った。
その後、電球の発明で明かりはいっきに安くなった。
20世紀初頭には、わずか数分の労働で電球1個1時間ぶんの明かりが買えた。さらに現在では、家庭用のLED電球を1時間つけるのに必要な電気代は、1秒働くだけで支払える。
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