今こそ言いたい「日本経済を衰退させた真犯人」 選挙で日本経済の未来が議論されない異常事態

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図表1で注意すべきは、アベノミクスが導入されても、日本の劣化は止まらなかったことだ。むしろ、最近の数年間では、日本の低下がより顕著になっている。つまり、アベノミクスは、日本の劣化を加速したのだ。

アベノミクスは大規模金融緩和を中心とした政策であったが、それが日本を再生させることなく、かえって衰退を加速したことに注意が必要である。

新技術の開発や人材の能力向上といった課題は無視し、ひたすら安い金利で資金を利用可能とし、かつ円安を追求した。それに応じて、日本経済が衰退していったのは、必然であった。

アベノミクス見直しを見送った石破首相

したがって、本来であれば、今回の総選挙においても、アベノミクスの見直しが主要な争点になってしかるべきだった。実際、石破首相は、かねてアベノミクスの再点検が必要だとしていた。しかし、総選挙ではこの問題を封印してしまった。

また、不思議なことに、野党からも、この点についての突っ込んだ議論はなされなかった。

金融正常化とは金利を引き上げることであり、それは金利負担を重くすることであり、借入人の負担を重くするから望ましくないという考えが支配的だからだ。

実は、低い金利を続けることこそが、日本経済にとっての大きな問題なのだ。しかし、そうした議論はまったく行われなかった。つまり、日本経済にとっての最も重要な論点が、今回の総選挙においては論議されなかったことになる。

事態はすでに深刻なレベルにまで達している。それにもかかわらず、政治は、この問題から目をそらしている。国民も目を覚まさない。この状態を打破するには、いったいどうしたらいいのだろうか?

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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