江戸時代の老親介護「担い手は男性メイン」の理由 核家族化が進んだ江戸時代「庶民の介護」事情
庶民層の介護の実態
これまで武士の介護についてご紹介しましたが、庶民の介護事情も気になるところです。ここでいう庶民とは、江戸時代に武士の支配を受けていた農民や町人など非武士階級全般を指します。当時の庶民層における「家」は、2~4世帯程度の家族が基本単位で、親が老いて要介護となった場合、配偶者、子供あるいは孫に面倒をみてもらうのが一般的です。
江戸時代の初め頃までは、中世から続く傍系親族(兄弟の家族など)や隷属者(下人など)を含む大家族が形成されることも多かったようですが、江戸時代になって農業生産力が安定してくると、傍系親族が独立できるようになり、隷属者も小作農などを通して家族を持ち自立しました。そのため高齢者介護についても、同居する夫または妻、子供・孫世代による対応が多かったといえます。
では具体的に、江戸時代における庶民の介護現場はどのようなものだったかを、幕府の『官刻孝義録』からピックアップしてみます。ただし『孝義録』に掲載されているのは表彰の対象であり、当時の為政者が良しとした親孝行者による理想的な介護事例です。そこに記載されている介護が一般的とは必ずしもいえませんが、それでも当時の様子は垣間見えるでしょう。