日曜劇場「海に眠るダイヤ」が"超名作になる予感" 戦後の端島と、現代日本を重ねる重厚な物語
ところが鉄平の兄・進平(斎藤工)や島の食堂の看板娘・朝子(杉咲花)、鉄平の母・ハル(中嶋朋子)らが鉄平の帰島を喜ぶなか、一平だけは激怒していた。
さらに鷹羽鉱業の職員で賢将の父・辰雄(沢村一樹)もまた、息子の就職先について思うところがある。
そんななか、端島にやってきた謎の歌手・リナ(池田エライザ)が、騒動を引き起こす。
第1話は、当時の端島の人々の日常がストーリーの中心になり、そのなかで現代の玲央といづみの生活ぶりが挟み込むように描かれた。
端島に生きる人々の姿の問いかけ
本作が伝えようとするテーマは、第1話でも色濃く描かれていた。
軍艦島と呼ばれる端島は、岩礁の周囲を埋め立てた南北約480メートル、東西約160メートルのコンクリート護岸に囲まれた島。1960年頃の島の最盛期には5000人ほどが暮らし、衣食住すべてが島にあった。
島民はほぼ炭鉱の労働者とその家族たち。全国から集まった労働者が、狭い島の閉鎖的な社会のなかで生活していた。
本作は、そんな戦後の端島と現代の日本を重ねている。外国人観光客や労働者があふれ、多様性が叫ばれる社会になった現代日本だが、戦後と比べて生活は圧倒的に豊かで自由になった一方、長引く経済不況や不穏な世界情勢のなか、日々の生きづらさや閉塞感を感じる若者は多い。
社会の構成要素に共通性はあるが、そこに生きる人々の精神性は180度異なる。戦争を生き抜き、明日に向かって前だけを見て生きる端島の人々の姿を、現代の東京に生きる人々と対比する。そこから視聴者が何を感じるか。
当時の端島を現代日本の縮図として描き、炭鉱員とホスト、時代の空気など、それぞれの対比からいまを生きる若い世代をはじめとした日本人全体に対して、問いかけを放っている。
本作のもう1つの要素は、自身のアイデンティティにつながる出自や地元への“誇り”だ。
劇中で、端島から島外の大学へ進学した鉄平、賢将、百合子は、端島出身であることが侮蔑の対象になることを知り、悔し涙を流す。
父と兄が端島の炭鉱員である鉄平は「海の底より下の、地底の底で真っ黒になって炭を掘っている父も兄も、誰かに踏みつけられるために働いているんじゃない」。賢将も「日本を支えてきたのは石炭だ」と憤怒し、鉄平は大学卒業後に端島に戻って働くことを決意する。
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