日曜劇場「海に眠るダイヤ」が"超名作になる予感" 戦後の端島と、現代日本を重ねる重厚な物語

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また、大学卒業時に就職先を決めず、鉄平と端島へ里帰りしていた賢将も、炭鉱の取引先企業・社長の「たかが端島」という言葉を聞き流せず、やがて鉄平と同じく端島で仕事に就くことを決める。

そこには、個人の権利や自由ばかりを主張して、負うべき義務への意識が薄れている、多くの現代人に対するメッセージも込められているように感じる。

また、端島の職員クラブで女給として働くリナが、セクハラをはねのけたことで島を追われそうになったときに鉄平は「端島でリナが踏みつけられて悔しい」と自身が端島出身で馬鹿にされたこととも重なり憤った。それは島を愛するからこその、憤りでもあるのだろう。

そして、端島の鉄平はリナへ、東京のいづみは玲央へ「ここから変えたくないか」と、時代を超えて同じ言葉を放つ。

海に眠るダイヤモンド 神木隆之介 
『海に眠るダイヤモンド』(写真:番組公式HPより引用)

いまの日本は、そしていまの生活は、このままでいいのか。変えたいと思わないのか。

端島で行動しようとする若者の姿から、いまを生きる現代人へそんなメッセージを投げかけた。

数々の名作を生み出してきたトリオ

脚本は、社会問題をエンターテインメントに昇華させて現代社会に切り込む社会派ヒューマンドラマの名手・野木亜紀子氏によるオリジナルのもの。監督は塚原あゆ子氏、プロデューサーは新井順子氏と、ヒット作を連発するTBS最強トリオによる作品になる。

3人による近作には、ドラマ『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年)、そして今年の映画『ラストマイル』があり、社会問題を世の中へ提起する切り口が鋭くなってきていたが、今作はさらに一歩踏み込んでいるように感じる。

第1話から、日本のエンターテインメントシーンのトップを走る脚本家のひとりである野木亜紀子節の脚本の切れ味に圧倒された。ただ、本作には、第1話にはまだ示されていないメッセージが仕込まれているはずだ。

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