ベースフード、赤字拡大と下方修正でも株高の背景 通期予想は黒字を死守、意外な人物が大株主に

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これは広告費の削減余地があるからだ。ベースフードの需要期はダイエットへの関心が高まる夏前から夏場で同社の決算期の上期にあたる。

このタイミングで消費者にアプローチするため、第1四半期に10億円、第2四半期は8.5億円の広告宣伝費・販売促進費を使用した。この規模の会社としては大きな出費で、これが上期の営業赤字につながっている。

橋本社長は第2四半期について「営業利益は前四半期比で赤字幅が大幅に縮小し、通期の黒字化の蓋然性が高まった」と語った(撮影:梅谷秀司)

下期は広告費を大きく減らす算段だ。さらにパンの配合の改善や製造効率を底上げするなどで製造コストを下げる。人員の採用縮小や荷造運賃の低減にも努める。8月に商品の値上げも実施しており、通期の黒字化を死守する構えだ。

広告費の削減によって今期は黒字化できるかもしれないが、それで今後の成長を維持できるのか。

同社は新商品の発売やリニューアルを続ければ、1度商品を試した顧客が継続的に商品を購入してくれるとして、今後は広告宣伝に多く頼らずに利益成長できると見込んでいる。

だが、広告費を抑制し続ければブランド認知は低下し、新規顧客の獲得が減速するおそれもある。売り上げの拡大には一定の広告投資が必要だ。製造から営業、販促まで事業全体を見直し、適切な広告投資ができる水準まで立て直す必要があるだろう。

赤字決算、下方修正でもストップ高

なお、業績予想を下方修正したにもかかわらず、ベースフードの株価は翌日の10月16日にストップ高となった。これは補助金への期待のようだ。

ベースフードは農林水産省が運営し、スタートアップの大規模技術実証を支援する「中小企業イノベーション創出推進事業」に補助事業として採択されたと発表。来期以降、最大18.7億円の補助金が手に入る。これらを全粒粉物や玄米を高配合した完全栄養パンの技術開発に充てる予定だ。

交付時期や方法は未定だが、来期にこの額が獲得できるのであれば、財務的に大幅な改善が見込める。

その後も株高は続いている。パソコン周辺機器大手のバッファローを傘下に持つ、メルコホールディングスの牧寛之社長による大量保有が要因だ。同氏が16日にベースフード株を8.36%保有していることがわかり、買いが先行した。

牧氏は18日に2.17%、21日も1.71%買い増し、合計12.23%を保有。保有目的は「主要株主として長期安定保有します」としている。

赤字決算と下方修正でも株高と奇妙な展開となったベースフードだが、本業の立て直しが喫緊の課題だ。黒字化を達成し、営業体制の改善を進められるか。重要な勝負所を迎えている。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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