巨人・阿部監督が「管理職のお手本」と言える理由 令和だからこそ輝く、厳しく優しいマネジャー

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組織に詳しい経営コンサルタントの横山信弘氏は、そもそも現場のトップである「リーダー」と「マネジャー」の違いについて、次のように話す。

「現場でトップを走るリーダーに求められるのは『情緒』。情緒的な周囲とのコミュニケーションが、組織に熱気を呼び込み、結果へと結び付く。

しかし、それだけでは継続性や再現性につながらない。そこで必要なのが、マネジャーだ。リーダーに求められるものが情緒とすれば、マネジャーに求められるのが『言語化』『何を』『どれくらい』『どのタイミングで』『どんな方法で』と、細かい戦術と戦略を描くことが、マネジャーの役割といえる。そのため、ビジネスの世界で名選手から名監督になるための条件は、いかに言語化が得意か、である。

反対に、言語化が苦手な、いわゆる天才肌の人は『何となくやっていたら、成果が出た』というパターンが多い。これでは、いざ人を率いる立場になったとき、再現性を持って成果を生みだせない」

マネジャーに必要な「3つの要素」

前編でも触れたように、引退後就任した二軍監督時代は「昭和」な指導が話題を呼ぶこともあった阿部監督だが、今季はその厳しさだけでなく、優しさも随所で見られ「変化」が感じられた。

一部報道によると、春季キャンプ前にはマネジメントの方針をまとめた小冊子をスタッフに配布。そこには「選手を絶対に萎縮させない」といった内容も盛り込まれていたという。

スター選手から二軍監督、そして一軍のコーチ、一軍監督へと立場を変えていくうちに、こうした変化・成長を見せた阿部監督。昨今のビジネスでは「リスキリング」も大きなテーマとなっており、タイミングやキャリアに応じて成長することは、ビジネスパーソンにも求められ、マネジャーも例外ではない。

横山氏は、マネジャーとして成長するための3つの特徴として「信念」「柔軟性」「勤勉」を挙げる。

これは木に例えると、わかりやすいかもしれない。信念は、木でいえば幹。「今期は売り上げよりも利益重視」「営業利益率を2ポイント上げる」など、戦略の基本となる部分をいかにブレずに保てるかが重要だと横山氏は話す。

この点、阿部監督はシーズン前に前述した小冊子でいくつかの方針を示し、またチーム方針として掲げた「守り勝つ野球」に向けて中継ぎ陣の整備も行ってきた。

2点目の柔軟性は、木でいえば枝や葉。幹をどう伸ばすかに正解はなく「大目的である『幹』がブレないのであれば、手段は臨機応変に変えるべき」と横山氏。正捕手だった大城卓三ではなく、気心の知れた小林誠司とバッテリーを組ませた菅野智之が、15勝3敗、防御率も1点台とまさに「エース」として復活した点などは、阿部監督の柔軟性の結果といえるだろう。

柔軟性に必要なのが、時代の変化に敏感になり、学び続ける勤勉さだ。かつては罰走などの昭和的なマネジメントをしていたものの、厳しさ一辺倒ではなく優しさも交えて時代に即したマネジメントへと変節を見せたことを考えると、まさに阿部監督は、成長するマネジャーに必要な3要素を兼ね備えているといえるだろう。

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