パーパス経営から「エシックス経営」に進化せよ 「多」律背反を解くための商売の基本倫理とは

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三位一体は、経営の現場の至るところに仕掛けていかなければならない。たとえば、「パーパス」という未来と「プラクティス」という現実の間の架け橋としての「プリンシプル」の必要性は、前述したとおりだ。これを筆者は「シン3P」と呼ぶ。

同様に、ドイツの哲学者イマヌエル・カントが『実践理性批判』の中で説く「理性(IQ)」「感性(EQ)」「悟性(JQ)」を新結合する「シン3Q」。空海が説く「身密(動)」「口密(言)」「意密(思)」を結ぶ「シン3密」。「たくみ」を「しくみ」に落とし込むための「ひきこみ」(「シン3み」)など。詳しくは、近著『エシックス経営』で論じている。

デジタル化が進めば進むほど、デジタルな発想を超える視点が求められる。それはアナログの世界に戻ることではない。デジタルという2分思考を超える3点思考を目指さなければならない。それを筆者は「シン三位一体」思考と呼ぶ。

和の伝統の中にこそイノベーションがある

そしてそれは、「和」を基軸としてきた日本の伝統的なイノベーションの流儀にほかならない。外の知恵にすがるのは、そろそろ終わりにしよう。答えは、私たち自身の中にあるのだ。

一方で、それらはいずれも大きくバージョンアップしていかなければならない。伝統に安住するのではなく、伝統の中からイノベーションを生み出していく必要がある。そしてそれが、私たちの明日の伝統になり、さらに次のイノベーションを生み出す母体となるはずだ。

エシックス経営の未来は、私たち1人ひとりが自信と覚悟をもって、大きく踏み出していけるかどうかにかかっている。

名和 高司 京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授

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なわ・たかし / Takashi Nawa

1980年東京大学法学部卒業、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカー・スカラー)。その後、約20年間、マッキンゼーのディレクターとしてコンサルティングに従事。10年より一橋大学教授。22年より現職。ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアのシニアアドバイザー、ファーストリテイリング、デンソー、味の素などの社外取締役を歴任。現在、SOMPOホールディングスの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役など。著書に『パーパス経営』(東洋経済新報社)、『超進化経営』(日本経済新聞出版社)、『問題解決と価値創造の全技法』(ディスカヴァー21)などがある。

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