パーパス経営から「エシックス経営」に進化せよ 「多」律背反を解くための商売の基本倫理とは

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シャイアーを買収した2019年、従来の「タケダイズム」に、新たな行動原理(プリンシプル)が加えられた。「PTRB」という4つの頭文字から構成される。Patient(患者)、Trust(信頼)、Reputation(評判)、Business(事業)の4つだ。

(出所)名和高司『エシックス経営』p.130。
(出所)名和高司『エシックス経営』p.130

PTRBは、倫理経営のプリンシプルとして秀逸である。タケダイズムは、倫理哲学としては素晴らしいが、それだけでは、収益との関係性が希薄だ。それに対して、患者への想いをスタートに、それが信頼、さらにはブランドという無形資産として蓄積されることで、事業、すなわち財務価値に転換されていく。

無形資産は非財務ではなく、未来の財務価値(未財務)を生む資産であることを、行動原理のレベルで、きわめてシンプルに示しているのである。

タケダのように、世界規模で倫理経営の最前線に立つ企業にとって、無形資産は将来価値の源泉となる「未」財務資産なのである。この本質的な視座に立たない限り、エシックス経営も、またぞろ、一過性のブームに終わってしまうことだろう。

逆に、「パーパス→プリンシプル→プラクティス」を三位一体として、有機的につなげていくことができれば、エシックス経営を力強く実践していくことができるはずだ。

タケダの進化は止まらない。2021年12月には、「世界に尽くせ、タケダ。革新的に。誠実に。」という新たなパーパスを掲げた。

「誠実」という伝統を踏まえて絶えず革新し、革新を新たな伝統としていく。この躍動感に満ちた信念こそが、世界規模で未来を拓いていく「シン日本流経営」の流儀となるはずだ。

「もったいない」を世界へ

次に、とびきり若い企業を取り上げよう。クラダシだ。10年前の2014年7月に創業、それから9年足らずの2023年6月には、東証グロース市場に上場。今なお、快進撃を続けている。

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