パーパス経営から「エシックス経営」に進化せよ 「多」律背反を解くための商売の基本倫理とは

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クラダシという社名は、「お蔵入り」している資産に市場価値をつけることに由来している。同社のミッションは「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」、ビジョンは「日本で最もフードロスを削減する会社」である。

(出所)名和高司『エシックス経営』p.173。
(出所)名和高司『エシックス経営』p.173

創業以来、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう可能性のある商品を自らのリスクで買い取り、自社通販サイトで、需要に合わせたダイナミックプライシングで販売している。

特に素晴らしいのが、平均年齢32歳という同社の若い社員全員が自分ごと化しているプリンシプル(同社では「バリュー」と呼ぶ)である。クラダシの社員は「前例を創ろう」「アクセル全開!」「明るく楽しく元気よく」という3つの行動原理を、日々実践している。

なかでも「前例を創ろう」には、目を見張らされる。フツーの企業では、「前例がない」ことが諦める言い訳になるのに対して、あえて前例となる新しいことにチャレンジすることを奨励しているのである。もちろん、ゆるい取り組みでは、前例となるような素晴らしい成果は上げられない。そこでは、「圧倒的な当事者意識」が求められるのだ。

「もったいないを価値へ」は、クラダシの志が込められた言葉である。それは3R(リデュース、リユース、リサイクル)、さらには、Regenerative(再生)という世界の潮流に先行するものでもある。Motttainaiの意味を「Too Good to Waste」と説明することで、日本発の世界用語として広がっていく可能性があるのではないだろうか。

ちょうど、長寿村として世界に注目される沖縄・大宜味村の秘密が、「Ikigai」という言葉に託されて、世界に広がっているように。

パーパス経営からエシックス経営へ

さて、ではいかにしてエシックス経営を実践していくか。パーパスは未来の「ありたい姿」を語っていればいいが、エシックスは「多」律背反が渦巻く現実の課題を解くカギとならなければならない。そのためには、3つの軸に沿って、視座をずらすことが求められる。

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