パーパス経営から「エシックス経営」に進化せよ 「多」律背反を解くための商売の基本倫理とは
タケダは創業当時から聖徳太子の十七条憲法の基調をなす「和を以って貴(とうとし)と為す」の教えを踏まえ、「事業は人なり、しかも人の和なり」を商売の基本に掲げていた。
この「和」を貴ぶ伝統を大切にしつつ、研究開発やビジネスの革新を加速しようと考えたのが、武田国男氏である。2001年の社長就任以来、矢継ぎ早にタケダの大変革に取り組んでいった。
そして2004年には、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」というミッション(筆者流に言えば、「パーパス」)を提唱。
同時に、行動原理(プリンシプル)を「タケダイズム」として、4つのキーワードに凝縮した。「誠実・公正・正直・不屈」の4つである。
いずれも大変崇高な思いであることは、異論の余地がない。しかし、「いい会社」は、どこも必ず大切にしていることだ。では、どこがタケダらしいのか? ここでは、2点に注目したい。
1点目は、これらが並列ではなく、「誠実」が基軸となっていること。英語では「インテグリティ」であり、本記事の文脈では「エシックス」そのものといってもよいだろう。あとの3つは、この「誠実」という中核を支える具体的なプリンシプルである。
2点目は、「不屈」という精神だ。崇高なパーパス達成のためにどんな困難や苦悩にも挫けず、行動し続ける強い想いを指す。武士道などに通じる精神で、日本人が古くから大切にしている倫理観である。
新しいパーパス「世界に尽くせ」
今から10年前、同社のCEOにフランス国籍のクリストフ・ウェーバー氏が就任。ウェーバー氏は、その5年後の2019年にアイルランドの製薬大手シャイアーを買収した。6.8兆円という買収金額は、日本企業の海外M&A案件としては最大だった。
その結果、タケダは悲願のグローバル製薬企業でトップ10入りを達成した。今や約5万人の従業員中、日本人比率は2割以下だ。
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