パーパス経営から「エシックス経営」に進化せよ 「多」律背反を解くための商売の基本倫理とは

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ここからは、日本に目を転じてみたい。日本企業の中にも、エシックス経営を実践している企業は数多い。そもそも「三方良し」「自利利他」「論語とそろばん」などを重んじてきた日本は、エシックス経営の聖地だったといえるだろう。

しかし、バブル崩壊以降、アングロサクソン流の株主資本経営を「世界標準」と勘違いして、せっせと移植してしまった。その結果が「平成の失敗」をもたらしたのである。

令和に入って早5年、「ガバナンス」を世界標準として崇めているようでは、「失われた○○年」の呪縛から抜け出すことは不可能だ。前回に論じたとおり、ルールに基づく他律的な統治ではなく、プリンシプルを基軸とした自律的な「自治(セルフガバナンス)」が、次世代経営のあるべき姿だからだ。

世界的に「倫理資本主義」が注目され始めた今こそ、日本本来の経営思想に立ち返り、未来に向けてバージョンアップしていかなければならない。そして、それを「シン日本流経営」として世界に発信することができれば、日本企業が時代のトップランナーに躍り出ることも夢ではないはずだ。

近著『エシックス経営』では、日本の多様な業種業態から、先進事例を紹介している。京セラ、トヨタ自動車、武田薬品工業、花王、ユニ・チャーム、三井住友トラスト、日立製作所、リクルート、クラダシ、谷口工務店の10社だ。

その中から、以下では、武田薬品工業とクラダシを取り上げたい。10社中、最古と最新の2社である。

聖徳太子と武士道が商売の基本倫理

武田薬品工業(以下、タケダ)の創業は、1781年にさかのぼる。前述したジョンソン・エンド・ジョンソンよりも100年ほど古い。

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