ワタミ、身売り話も飛び出した三重苦の実態 不振の外食を支えてきた介護と宅食も失速

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「ブラック(企業という)批判の影響もあると思うが、提供する商品とお客様が求めるものとの間に乖離が生じてしまったことが、客離れの大きな原因だった」(清水邦晃社長)。調理工程が複雑化し、提供時間の遅れにつながったことも、客離れを加速させた。

その反省を踏まえ、今年4月には10年ぶりとなる値下げを実施し、方針を180度転換。平均単価を1割引き下げ、注文点数の増加を狙った。だが、第1四半期の既存店売上高は、前年同期比10.4%減で着地。通期計画の前提としている前期比4.5%減を大きく下回った。

下支えしてきた介護と宅食も苦戦

厳しい状況は外食にとどまらない。これまで収益を下支えしてきた介護、宅食の両事業も苦境にあえいでいる。

2013年初に90%を維持していた老人ホームの既存棟入居率は、7月末には78.2%まで落ち込んだ。「広告だけに頼り、医療機関などへの小まめな営業ができていなかった」(中川直洋執行役員)側面もあるが、あるグループ関係者は「不祥事が大きく報道されたことで信用を失った」とささやく。

2013年に入浴中の死亡事故が発生したほか、今年2月にはノロウイルスが原因で入居者が亡くなった。命を預かる事業だけに、こうした事案が少なからず入居率に影響したと考えられる。

右肩上がりで成長を続けてきた宅食事業も、配食数が減少傾向にある。高齢者市場の拡大をにらんで2008年に参入したが、ここ数年で多くの競合が台頭し、健康をうたった類似商品が続出。

外食や介護におけるネガティブイメージも重なり、直近7月の1日当たり配食数は24.2万食と、2013年後半のピーク時から16%減の水準まで落ち込んだ。

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