ワタミはなぜここまで凋落してしまったのか 102店の大量閉鎖を招いた真因

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「和民」「わたみん家」などの居酒屋チェーンを運営するワタミが、2015年3月までに102店の閉鎖を決めた。もともと60店の撤退を計画していたが、2014年9月中間決算で41億円の最終赤字となるなど業績不振が止まらず、全体の約15%に当たる大量閉鎖に発展した。かつて「不況に強い」とされていた居酒屋チェーンの雄、ワタミはなぜここまで凋落してしまったのか。

引き金となったのはみずからが仕掛けた価格競争だ。

話は約5年前にさかのぼる。2008年8月以降、居酒屋の客数は前年割れが続いていた(日本フードサービス協会調べ)。その事態を打開すべく2009年に「生ビールの100円値下げ」を打ち出したのが、ほかならぬワタミだった。

価格競争で負のスパイラルに

これを機に、居酒屋チェーンは値下げ合戦へと駆り立てられる。10円単位での値下げ、均一価格店の登場。その代償は大きかった。価格を下げるために、人件費を削る。そうするとサービス力が弱くなる。お客の利用動機が「安さ」に絞られると、10円でも安いお店が選ばれる。居酒屋チェーンは負のスパイラルにはまり、仕掛けたワタミも巻き込まれてしまった。

そこを顧客の嗜好の変化が襲う。

2011年3月の東日本大震災以降、食事やお酒を楽しむ際にとにかく安さを求める層と、付加価値を求める層に二分化された。安さを求める層はコンビニで買い求めた食品やお酒を自宅で飲む「宅飲み」や立ち飲み店、ファミリーレストランなどで十分だと考え、ただ飲んで食べるだけでなく仲間との団らんをはじめとする付加価値を求める層は、回数を減らしても少しぜいたくなお店へ出かける。

価格競争に陥っていた居酒屋チェーン各社は、この真ん中で宙ぶらりんとなってしまった。こうなると居酒屋というジャンルがもはや曖昧で、お酒を飲むシーンやスタイルが、細分化されたのだ。逆にコンビニや立ち飲み店、ファミレスはこうした需要に対応するべく、さまざまな手を打ち成果を挙げた。居酒屋は価格の安さではもう勝てなくなった。ただ、いったん下げてしまった価格を、上げてもなかなか消費者は受け入れてくれない。

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