さらに、現実的に言っても、石破政権の誕生は、日本の立て直しの最終局面、集大成となる可能性がある。すなわち、安倍氏の「デフレ脱却」、岸田政権の「新しい資本主義」、そして、石破氏の「社会資本・主義」として、3段階の日本経済発展政策は完結するのである。
「新しい資本」主義=「社会資本」主義
岸田政権の「新しい資本主義」とは何だったのか?という疑問を多くの人が持っただろう(そして今では忘れているだろう)。これを、「新しい」資本主義、と捉えるのではなく、「新しい資本」主義、と捉えなおすのである。
では「新しい資本」とは何か。それは株主資本ではなく「社会資本」である。株主資本だけでなく、社会資本をも重視する政策、それが「新しい資本主義」であったのだ。
社会資本は英語ではまさにSocial Capitalである。日本の学界では、アカデミックな意味でのSocial Capitalは「社会関係資本」と訳すのが多数派のようだが、ここではアカデミックよりももっと広くSocial Capitalを捉え、社会資本としている。1990年代の議論では、これには、人々の信頼、社会における関係性、そして民主主義を含む社会の制度が含まれるとされた。
そして、この社会資本が充実している国ほど経済成長する、という実証分析が流行した。ロバート・バロー ハーバード大学教授をはじめ、多くの経済学者が、民主主義が経済成長をもたらすという実証研究を行ったが、それは、この議論の一部だったのである。
Social Capitalの研究でもっとも有名なのは、政治学者であるロバート・パットナム ハーバード大学教授の“Making Democracy Work: Civic Traditions in Modern Italy”というイタリアの地方政府の南部と北部の比較分析、およびアメリカ社会を題材とした『孤独なボウリング――米国コミュニティの崩壊と再生』という著作である。フランシス・フクヤマの『TRUST』もこの流れに含まれる。
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