10月1日に石破新政権が発足した。為替市場では、9月末に高市政権誕生への期待から円安が進んだ後、「まさかの石破政権誕生」への落胆からドル円相場は一時141円台へと円高になった。しかし、その後、石破茂首相などは「経済政策は岸田政権を引き継ぐ姿勢」を強調。また植田和男日銀総裁との面談の後に、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と語り、日銀の追加利上げに釘をさした格好になった。
支持率低下に直結、自説を引っ込めた石破首相
筆者は前回のコラム「『石破新政権誕生』で、日本株は停滞しかねない」(9月27日配信)で、日銀が必要以上に利上げに「前のめり」になっているため、次回の金融政策決定会合(10月30~31日)での利上げを予想していた。
だが、石破首相などの発言を踏まえれば、政治情勢に敏感な植田日銀が10月会合で利上げに踏み出す可能性はかなり低下した。
石破首相は、就任前は安倍政権のもとで続いた金融緩和に批判を続けており、新著『保守政治家』では、「金利のつかないお金が大量に市場に出回ったことで、企業が金利負担という資本主義における付加価値創造能力を失い、安きに流れた面があった」と金融緩和政策に批判的な考えを示している。筆者は、この石破首相の本音はまったく変わっていないと推察する。
にもかかわらず、就任早々、前言を撤回して、日銀の追加利上げを牽制した。1つの理由は、石破政権が決まった直後に大幅な円高・株安となり「石破ショック」などと言われたことだろう。
3年前に岸田前政権が金融所得増税を撤回したが、やはり政権発足直後に経済政策転換への懸念から大幅な株安が起きたことが大きかった。同様の事態を目の当たりにした石破首相は、支持率低下に直結する時期尚早な金融引き締めに対して、警戒姿勢を示さざるをえなかったのだろう。
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