石破政権下では日本の経済成長を期待できない 「前言撤回」をしても「根本的な疑念」は拭えず

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石破政権下での経済政策の転換への警戒が一転して和らいだだけでなく、アメリカ9月雇用統計の上振れ(10月4日)もあいまって、ドル円相場は直近では1ドル=149円台まで円安が進み、石破政権への疑念は低下している。

「減税」や「規制緩和」などの成長政策が期待できない

だが楽観は禁物だろう。まずは、岸田政権の政策が続くとすれば、経済成長を高めるために財政政策を機動的に発動する対応は期待できない。筆者は予想していないものの、仮に再度円安が進むことになれば、今度は金融引き締めへの要求が、よりあからさまに行われるのではないか。

また、石破政権の経済政策は独自色に乏しいのだが、地方創生と防災を重視している。具体的には、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増、また、専任の大臣も念頭に、防災庁の設置に向けた準備を進めるとした。こうした政策が実現すれば、長期的な経済成長押し下げ要因になると筆者は考えている。

なぜなら、地方政府への補助金拡大は、その分中央政府の支出が増えることになるが、地方への所得分配強化は市場メカニズムを阻害する副作用のほうが大きいと考えるからだ。また、防災庁の設置は、「霞ヶ関の仕事や権益」は増えるが、新たな組織を作るからといって、政策の実効性は必ずしも高まるとは限らない。こども家庭庁の創設(2023年4月)もそうだが、行政組織の肥大化を理由に将来の増税が行われる可能性が高まり、経済成長を下押しするだろう。

結局、経済成長を、短期的にも長期的にもサポートする政府の対応で有効なのは、家計部門への減税政策である。そして、長期的な経済成長を高めるには、規制緩和などの政策を地道に進めることも重要である。

だが、政権与党が長引き、自浄機能が失われた自民党政権では難しいのかもしれない。さらに、経済成長を明確に重視している高市氏を党内で支持する政治家は、政治資金不記載の問題で、政治力をさらに低下させつつあることも、無視できないリスクある。

石破首相の「前言撤回」によって、株式や為替市場は落ち着きを取り戻した。だが前向きな経済政策はまったく期待できないため、株式市場が新政権を好感する可能性は低い。10月27日の衆議院選挙を経てもこうした情勢は変わらず、日本株のリターンが米国株を下回り続ける状況は、2025年にかけて続くだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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