窪田:日本でも2020年から始まった新学習指導要領により、非認知能力を育成していくことが求められるようになりました。
実は、近視対策先進国ともいえる中国でも、公教育において似たような動きがありました。中国政府は、2018年に近視削減のための国家計画を策定し、2030年には高校生までの近視発症割合を70%以下にすることを目標に掲げています。
近視対策先進国・中国での公教育変化
近視抑制に効果的な1日2時間の屋外時間を毎日確保できるよう、中国ではまず2019年に国がオンラインゲームを規制しました。さらに2021年には小学校1~2年生の宿題を禁止、学習塾も廃止するという驚くべきスピードで進めています。すでに台湾の小学校では近視抑制の効果が表れ始めました。
ボーク:学力面への影響もあるのでしょうか。
窪田:学力面への影響が統計に表れてくるのはまだ先でしょうが、香港ではPISA(OECD生徒の学習到達度調査)ランキングが落ちなかったといわれています。
一説には、イギリス統治下にあった香港では、「国際バカロレア教育」が中国のほかのエリアよりも浸透していたことがあると考えられています。ご存じかと思いますが、国際バカロレア教育は、低年齢のときは精神と身体の両方を発達させることを重視する内容で知られています。
ボーク:学力を伸ばすのを下支えするのが体力や非認知能力です。
窪田:やはりそうなのですね。私もアメリカへの転校の経験から、まずは学びに向き合う素地を作るのが大事だと感じていました。そうすれば、高等教育を受ける年齢になったときに、自分が何をすべきかを考えて自主的に勉強に取り組めるのではないでしょうか。
ボークさんの著書を拝読し、日本でも2020年度の教育改革で思考力・判断力・表現力の3つをバランスよく育成する方針に変わったと知りました。以前は、やればやるだけ点数が上がる認知的な勉強をいち早く開始し出す「先取り学習」をするのが圧倒的に有利だった時代でした。ですが、まずは非認知能力を備えた心と丈夫な身体を作り上げたほうが後々有利になる時代に移行してきたと感じています。
ボーク:そうですね、日本でもようやくその段階にきました。そして、非認知能力は家庭でこそ最も効果的に育むことができます。
窪田:次回は、その工夫をぜひお聞きしたいです。
(構成:石原聖子)
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