理屈上は、為替取引を一気に自由化して、急速かつ大幅な元安にしてしまうことが、最善の策だろう。急激な資本逃避から、資産価格にも実物投資にも短期的には大きな悪影響が出ようし、元安で「国勢」が小さく見えるようになる点は、中国共産党にとってはお気に召さないかもしれない。
だが、国内のバランスシート調整の悪影響を緩和し、フローの経済を立て直すには金融緩和と通貨安が必要だし、元が十分魅力的なだけ安くなれば海外からも再び投資は行われるはずだ。
この際、元の為替を完全なフロート制にして、政府の元レート維持をあてにしている外資連中の一泡吹かせてもいいのではないか。
しかし、中国当局が打とうとしている手は、当面の資本流出を防ぐために人民元の売りを規制する方向のようだ。これは、むしろ事態を悪化させ、問題の解決を遠くする可能性がある。投資家は、中国経済の、迷走、意外に大きな落ち込み、低迷の長期化、などをそれぞれリスクとして織り込んでおくべきだろう。
チャイナショックは日本株の致命傷になるか?
さて、ここからは考える対象を日本株に絞るとして、今回のチャイナショックで2年間以上にわたって続いてきた「アベノミクス相場」は、終焉を迎えるのだろうか。
ここまでの下落率は、ザラバの高値(8月6日、2万0946円)と安値(8月26日、1万7714円)の比較で行くと15.4%の下落だ。これは、昨年2回あった10%を超える下げ局面よりも大きいが、2013年5月の通称「バーナンキショック」(バーナンキFRB議長の金融緩和縮小示唆がきっかけだった)の22.1%よりもまだ小さい。
中国経済の状態は前述の通り芳しいものではないので、下げの範囲がこの程度にとどまるものとは限らないし、中国発の不安定要因の影響をしばらく受け続けることにはなるだろう。
しかし、中国経済の減速はほぼ確実だとしても、それが単独の理由として、日本株の下げ要因(しかも大幅で期間も中長期に)になるようには思えない。
その理由は4つある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら