公助、共助ではなく自衛を余儀なくされる--『国民皆保険はまだ救える』を書いた川渕孝一氏(東京医科歯科大学大学院教授)に聞く

公助、共助ではなく自衛を余儀なくされる--『国民皆保険はまだ救える』を書いた川渕孝一氏(東京医科歯科大学大学院教授)に聞く

国民皆保険制度ができて、今年で50年。現行制度が維持できるかどうかの正念場を迎えている。維持のための選択肢は一つに絞られているという。

──国民共通番号制度が維持の決め手ですか。

共通番号の導入は、負担と給付をフェアにしようとすると、どうしても本人の“諸事情”を知る必要があるからだ。共通番号というと、納税者番号制度を連想する人が多い。これは30年ほど前、為政者にとってのメリットばかりが強調された。その名寄せ作業の効率化や確実性ばかりでなく、保険者側にも大いにメリットがあることを人々に理解してもらわないと導入は進まない。東日本大震災に伴って起こった混乱も導入を後押ししている。

──導入は2015年に可能な範囲で開始するとなっています。

今の準備状況を見ると、とても健康保険などの医療分野では間に合いそうもない。導入の際には政府に「すごみ」がいる。言い換えれば国民による信頼だ。共通番号制はいわば裸になれということであり、自分の情報をすべてさらす。その代わり、政府はあなたの社会保障、医療保障をきちんとすると。

格差社会になってしまって、持っている人か持たない人かによって、保険料を払える人と払えない人を峻別しなければならなくなっている。それをきちんと把握するには共通番号制しかない。しかし、今の政府には信頼に至るすごみがない。ほかの国を見ても導入にはすごみが大事だ。

──ほかの国とは。

韓国や台湾が好例だ。日本より遅く、韓国は1989年、台湾は95年に国民皆保険になった。香港での会合で台湾の人が指摘していたが、台湾では、診療所、病院、ホスピスなどを問わず、一人ひとりのデータが一気通貫で取り出せるそうだ。それをパブリックドメインということで研究者も利用できる。

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