最近よく聞く「ジェンダーレス」って何だ? ファッション界はネコも杓子も夢中
こうした見方は、ラッド・フラーニのようなデザイナーの考え方とも一致する。彼の1月のショーでは、性別がわからないようお面をかぶったモデルが登場した。また、ニコラ・フォルミケッティのジェンダーレスのストリートファッション・ブランド「ニコパンダ」もそうした考え方だ。
「1.61」や「テルファー」、ロサンゼルスの「69ワールドワイド」のデザイナーら、米国の若いデザイナーの中にも、ジェンダーレスの展開を進めている人たちがいる。彼らは、男性と女性の両方に同一のアイテムを提示し、時流に敏感な人たちの心に訴えている。
ジェンダーレス商品を買うのは誰?
「ミレニアル世代によって、性的指向の見方が全体的に問い直されている」。こう語るのはルーシー・グリーン、広告代理店のジェイ・ウォルター・トンプソンでトレンド予測を行う組織、JWTインテリジェンスのワールドワイド・ディレクターだ。「12~19歳くらいの人たちの間では、男女の境目がどんどんあいまいになっている」。
また、枠にはめられることを嫌い、一般的な性別やほかの固定的なレッテルを一笑に付す人々がいると、トレンドウォッチャーたちは言う。その世代はブランドに魅力を感じはするが、お仕着せのスタイルには首をかしげる。地味でロゴを避けがちな彼らは、無印良品やユニクロ、エバーレーン・オンラインなどの店で、シンプルで自己主張しない服を買う。
そうした人々の中には、設立11年になるニューヨークのブランド「テルファー」に魅力を感じる人たちもいるかもしれない。9月に開かれるニューヨーク・ファッションウィークで、デザイナーであるテルファー・クレメンスは、オフショルダーのタンクトップやトレンチコート、レース状のデニムのトップスやズボンなど誰でも着られるスタイルを、中性的なモデルに着せて提案する。クレメンスは自分のイニシャルであるTCのロゴをこれらの服に目立たないように入れている。しかし、クレメンスは「本当にあからさまなことをするのは、私の性格に合わない。私のブランディングはほぼ潜在的なものだ」と言う。
現実的に見れば、性別が無関係になることはデザイナーにとってメリットがある。こう話すのは、マイテレサ・ドットコムの仕入れ担当ディレクター、ジャスティン・オシーアだ。彼がオンラインの業界紙「ビジネス・オブ・ファッション」に7月に語ったところによると、デザイナーは男性用の服と女性用の服を合わせて提示することで、時間とおカネを節約できるし、アイデンティティをより明確にすることもできるという。