【産業天気図・11年10月~12年9月】後半に震災からの復興需要見込んでも、世界景気悪化懸念で改善は限定的

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 快晴=空前の活況で懸念材料なし。業界全体が増益へ
 晴れ=主要各社が増益。懸念材料が消えれば「快晴」へ
 曇り=市場環境や成長性に陰り。主要各社が収益横ばいか減益。回復か一段悪化か微妙
 =競争激化や市場縮小で環境厳しく、主要各社が大減益か赤字
 土砂降り=従来より業績見通しが悪化、回復のメドが立たない

主要業種の天気予報図
(下線付き業種名をクリックすると詳細記事にジャンプします)
業種名 天気 天気概況
11年10月~12年3月期(前半) 12年4月~9月期(後半)
建設業 曇り 晴れ 道路や鉄道、建築物の応急復興需要は一巡し、本格的な復興需要が始動する3月までは様子見。復興需要は海洋土木、地盤工事から徐々にスタートする。ただし被災地以外の官公需は停滞を見込み、東高西低が続きそう。
紙・パルプ 晴れ 晴れ 需要の低迷、原燃料価格の高止まりなど経営環境に何ら変化はないが、足並みそろえて実施した値上げが10月以降大きく収益に貢献する。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた日本製紙も12年度には完全復旧へ。
化学 曇り 晴れ 震災の影響で前半停滞した自動車生産の復調は好要因。が、11年夏以降、液晶パネルや半導体市場の急減速を受けて電子系の部材が軟調に転じる。アジアで好調だった化成品の市況も軟化。12年春~夏まで調整続くか。
医薬 曇り 曇り 大手製薬企業は主力製品の米国での特許切れ、後発医薬品参入によるマイナス影響が続く。国内は高齢者人口増が下支えとなる一方、12年4月に6%前後の薬価マイナス改定となる見通し。中堅企業への影響大きい。
人材サービス 曇り 曇り 製造派遣・請負は自動車業界中心に需要は旺盛だが、採用難で各社伸び悩み。タイ洪水影響はプラスマイナス相殺か。技術者派遣は上向き、事務系派遣はほぼ横ばい。派遣法改正が、規制強化とならない見通しで追い風。
石油 曇り 曇り ガソリンなど国内の燃料油需要は前年割れが続く。需要減退下で元売り各社の精製販売マージンは弱含みで推移。コスモ石油は震災被害で稼働停止している千葉製油所の固定費負担が重い。
商社 晴れ 晴れ 資源部門が業績拡大を牽引。非資源も底堅く、5大総合商社は軒並み過去最高益を更新する見通し。原料炭や鉄鉱石で11年秋口からの価格調整が長引けば12年度は利益反動減だが、それでも利益水準はなお高い。
ガラス・セメント 曇り 曇り 原油高騰分の値上げが浸透すれば収益の底入れが期待できる。電子部品向けは、液晶や太陽電池用などでの競争激化による過剰供給が一巡するまでは厳しそう。
鉄鋼 曇り 曇り 主原料の鉄鉱石や原料炭が秋から調整に入る一方、汎用材中心に価格軟化しマージン改善は限定的。アジアなど海外事業は拡大続き、自動車向けも震災後の立ち直り進展。建設長期低迷で電炉も含め東北の復興需要を待機。
非鉄 曇り 曇り 銅、アルミ、亜鉛などの製錬は、震災やタイ洪水に伴う自動車の生産減、円高が逆風。上昇を続けた金属価格も欧州危機を契機に頭打ちとなり、収益の重しとなった。今後は新興国需要や原料の鉱石開発に期待がかかる。
精密 曇り 晴れ 中国を中心に新興国需要が追い風。複写機、カメラなどは増勢。だが、タイ洪水影響や急激な円高が響く。来上期も新興国の需要満喫、オフィス向けなど好調。ただし欧州債務危機などで需要冷え込みリスクに注意。
海運 土砂降り 晴れ 船体供給過剰な中、豪州、ブラジルの長雨や東日本大震災、タイ洪水と天災相次ぎ自動車船の輸送台数陥没、コンテナ船、バラ積み船の運賃大暴落。来期も船体供給過剰が続くが、天災影響なく各社黒字化、大幅増益へ。
空運 晴れ 晴れ 円高追い風で海外旅行が順調、国際線はプラス推移。国内線も復調続く。燃油費上昇こなし企業業績は堅調。来上期も同様の流れだが、欧州債務危機等でビジネス利用が一気に冷え込むリスクには注意が必要。
情報通信 晴れ 晴れ 顧客単価が高いスマートフォンの浸透が想定超。12年前半にはアイフォーン5の発売も予定されており、一層のスマートフォンシフトが進む。一方で、震災関連の費用や減価償却は減少傾向。収益は絶好調。
銀行 曇り 曇り 復興需要本格化でも国内資金需要の回復は期待薄。円高影響がしだいに中小企業にも及び、12年3月に期限切れを迎える円滑化法の再延長がなければ倒産増加のおそれ。低水準だった銀行の与信費用が増加する可能性も。
証券 雨 曇り 株式市場低迷が長引き、株委託手数料やトレーディング収益落ち込む。投信も失速。引き受け手数料も大幅減少。欧州債務危機、円高、内外景気の減速懸念は12年前半にかけ続く可能性高く、収益低迷も当面続く見通し。
食品 晴れ 曇り 東日本大震災後、特に飲料や加工食品中心に特需が続いている。バターなどは値上げを行っており、低価格化競争も一服。ただ、後半は震災特需剥落で数量減る。油脂、砂糖など原料高重く、利益圧迫は必至 。
家電・AV 雨 曇り 円高に加え、韓国メーカーと競争激化。欧米市場の景気悪化も響き、在庫膨張で価格競争に拍車がかかる。テレビ事業はリストラが進み12年度に改善傾向だが、成長目指す新興国は利幅薄く、価格競争は変わらず。
半導体 雨 曇り スマートフォンなどに用途拡大進むNANDは堅調。だが、DRAMは市況壊滅的で世界首位のサムスン以外、全社赤字。韓台大手メーカーに投資抑制の動き、装置企業にも逆風。サイクルの反動で12年前半に底入れか。
重電 晴れ 晴れ 電力機器や昇降機、FA関連などの重電分野は順調。新興国需要の拡大が追い風に。各社とも問題事業の整理が進み、利益水準高い。大手3社では半導体依存度の高い東芝に下振れ懸念。重電比率高い日立、三菱は安定的。
電子部品 曇り 曇り スマートフォン向けなど一部は引き続き増勢。ただ、AV機器向けの減速が想定超。タイ洪水に伴う自動車やHDD関連など顧客の注文延期や自社の調達遅れに伴う生産停滞が痛い。アジア系企業台頭で価格競争激化。
自動車 晴れ 晴れ 大震災による影響を脱し生産正常化。10月発生のタイ洪水影響も比較的早期に回復。円高の影響あるが、中国の新車販売は底堅く、北米はリーマンショック後の回復基調続く。来年度も新興国中心に市場拡大が続きそう。
造船・重機 晴れ 晴れ 新造船の受注低迷し、円高も収益圧迫。だが海外のLNGプラントや内外のガスタービンは堅調。車用ターボチャージャー、工作機械、建設機械、建機用油圧機器などの量産品が12年度にかけ本格回復に向かう公算大。
工作機械 晴れ 曇り 牽引役の中国需要が伸び悩み。円高や世界経済の減速も懸念材料。工業化続くアジア市場の成長余力は大きく、中国政府の金融政策次第で一段の伸びもありうるが、来期にかけ製造業各社の設備投資が一巡する公算大。
建設機械 曇り 晴れ 金融引き締めで最大市場の中国が急失速。だが来上期には調整期を脱し、再び成長軌道へ。新興メーカーとの競争激化が懸念材料だが、資源国の鉱山開発需要は健在。復興工事が本格化すれば、国内にも大型需要が見込める。
鉄道・バス 曇り 曇り ホテル事業では外国人客の減少がまだ続くものの、震災による鉄道、小売りでの出控えなどの悪影響は11年4~9月期でほぼ消える。ただ、景気に低迷感があり、事業の本格回復はまだ先の見通し。
住宅・マンション 曇り 曇り 引き続き1次取得者の需要は底堅いが、景気の不透明感などから消費者の住宅購入意欲が十分持ち直しているとは言いがたい。不動産各社も値崩れを招くような売り急ぎは控えており、分譲戸数は低位安定で推移しそうだ。
ソフトサービス 曇り 曇り 今下期は東日本大震災、タイ洪水などの影響で企業のIT投資意欲は鈍い。ただ、来上期は震災後に落ち込んだ開発案件の反動増や官公庁からの復興案件で上向く。クラウド移行を追い風にデータセンターの需要は堅調。
電力・ガス 土砂降り 雨 電力会社は原発再稼働不透明で燃料費が一段と膨らむ公算。原発利用率にもよるが、営業赤字に陥る企業が多発の可能性。一方ガスは燃料費高止まり想定で、燃料費調整制度に伴う値上げが追いつき収益回復する公算だ。
コンビニ・スーパー 曇り 曇り タバコ値上げ効果一巡、冬の節電需要で下支えるが既存店横ばいが精いっぱい。後半は震災後の買いだめ特需や夏の節電需要が剥落。出店加速する上位数社を除いて既存店前年割れが相次ぐ。頼みはアジア出店とネット通販。
アパレル 曇り 曇り 11年3月中心に震災で大幅減となった春物回復、営業時間短縮等の影響もない。ただ消費意欲の低迷懸念、中国縫製工場の人件費増など悪材料は山積。アジア展開加速する企業に成長余地あるが、国内での成長は厳しい。
外食 曇り 晴れ 震災影響一巡で、書き入れ時の3月以降好調を取り戻す。特に不採算店整理が進む居酒屋やファミレスは収益力回復。ファストフードや牛丼は拡大路線維持。焼き肉は急反発。ただ、魚価や米価など食材高騰が懸念材料。
損保 土砂降り 晴れ 自動車が料率改定効果で底入れし事故率も改善。ただ台風12号、15号に加えタイ水害で自然災害の発生保険金が高水準。有価証券評価損、円高の海外子会社収益目減りも響く。来上期は自然災害平準化前提に利益回復。
放送・広告 晴れ 晴れ 震災影響が一巡し好採算のテレビスポット広告が急回復。スポット枠上限に近づき単価向上も。番組提供のタイム広告も底打ち。テレビ中心のマス広告回復に加え、インターネット広告は市場拡大続く。海外展開も積極化。
化粧品・トイレタリー 曇り 曇り 各社ともアジア中心に新興国市場を積極開拓。国内日用品の低価格化は依然厳しいが、高付加価値商品の積極投入で応戦し持ち直しぎみ。化粧品は百貨店中心に高価格帯不調、2000円以下の低価格帯へのシフトが進む。
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