【産業天気図・11年10月~12年9月】後半に震災からの復興需要見込んでも、世界景気悪化懸念で改善は限定的

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 震災被害から立ち直りつつあった日本の産業界は、タイの洪水、欧州の債務危機、中国の金融引き締めなど足元は依然、世界景気の悪化に悩む状況。ただ、来期に入れば震災復興需要は本格化し、自動車の挽回生産も進み、中国経済の再加速にも期待がかかる--『会社四季報』担当記者の業界景況感予想はそう総括できそうだ。

 今回の予想で対象となった35業種のうち、足元から期末にかけて、「晴れ」(主要各社が前年同期比で増益)になると見込まれているのは10業種。自動車など東日本大震災の影響でサプライチェーンが大きく乱れた業種も含まれ、産業界の回復力を見せつけている。

 「晴れ」業種の数は来春以降に15業種に増える。前年同期比で震災影響がなくなるのに加え、復興需要が見込まれる。 タイの洪水影響で一時停滞した自動車の挽回生産も本格化してくる。

 2011年10月~12年3月の前半と、12年4~9月の後半とを比較した場合、前半より後半の景況感が上向くと見込まれているのは11業種。改善が顕著なのは、海運と損保。ともに「土砂降り」から「晴れ」へ3段階の改善。海運は天災影響で輸送数量が激減し海運市況も悪化した前半からの反動増が見込まれる。また、損保は自然災害が平準化する前提で改善を見ている。震災からの復興需要が期待されるのは建設、そして建機だ。建機は足元こそ最大市場の中国の金融引き締めが痛手だが、後半になれば日本の震災復興需要が本格化し、中国の金融緩和の効果も見込める。

 だが、こうした上向きのムードを味わえない業界も多い。たとえば内需では、コンビニ・スーパーは震災による買いだめ特需がなくなり、新規出店分を除けば前年割れの見込み。住宅・マンションも低位安定で、売り急ぎを控えて値崩れを防ぐのがやっと。最高の景況感である「快晴」(業界全体が増益)の業界は引き続き皆無の状況だ。

 震災直後の谷こそ早期に脱却できたものの、円高にタイ洪水などの影響もあり、日本の産業界は明確な方向感のない状態。日経平均株価も欧州の債務危機が尾を引き、9000 円を大きく割り込んでおり、震災直前の株価水準である1万円台は遠い。財政の傷んだ欧米をはじめとした先進国経済に期待が持てない中、中国経済がいつアクセルを踏んでくるのか。タイの洪水影響からの回復ともども、牽引役としてのアジア経済に期待が高まる状況だ。

>>>次ページに主要業種の天気予報図
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