1缶298円「未来のレモンサワー」脱安値化の適否 100円台のRTD市場に、アサヒの新戦力は定着?

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さらに、特筆すべき点はアルコール度数の低さだけではなく、価格もそうだ。

ストロング系をはじめとした缶チューハイだけではなく、RTD市場は安さを売りにしていた。例えば、-196℃ストロングゼロは350mlで162円、500mlで220円である(いずれもメーカー希望小売価格。以下同)。サントリーだけではなく、そのほかメーカーもこの値段設定に追随している。おかげでストロング系は安く簡単に酔える飲み物となった。

チューハイの写真
缶チューハイは、安価さをウリに人気を獲得してきた背景がある(筆者撮影)

つまりは、「ビールを買って飲むよりも満足度が高いよ」と、普段ビールやワインなどを飲む層からの流入を見込むだけではなく、ストロング系の安売り競争から距離を置こうとしている見方もできる。

同社は未来のレモンサワーを主軸として、2025年までに2022年比1.5倍以上となる600億円の売上高を目指している。アサヒビールの反撃が始まった。

一時的にはやっても、「定着」するのは難しい

とはいえ、この脱安値化という戦略がうまくいくかはわからない。今は物珍しさ的に売れ行きがいいのだが、レモンサワー市場はもはやラインナップが確立されたビールよりもレッドオーシャンであり、突如として販売終了になる商品もたびたびある。そんななか、他製品よりも高めに設定された未来のレモンサワーが吉と出るか、凶と出るかというと、筆者は後者ではないかと思う。

市場原理的に新商品や珍しいものは一時的にははやるが、「定着」するのは相当難しい。そして、前述のように消えたブランドは枚挙にいとまがない。

例えば、現在のRTD市場を牽引するサントリーは2019年に「カロリ。」というカロリーオフが売りだった商品を「マーケティング上の理由」で終売。

2013年にはイギリスのロックバンドであるザ・ローリング・ストーンズのベロのロゴ「Lips&Tongue(リップスアンドタン)」をあしらった「ストーンズバー」という栄養ドリンク風味のカクテルを、なぜか若者向けに展開。案の定、目標の半分も売れず、翌年シリーズは打ち止めとなった。

そして、缶ではないが、モルソン・クアーズ・ジャパンの「ZIMA」は2021年に日本から撤退していた。かつては「若者の酒」というイメージだったが、この時期に撤退したのは完全にストロング系に押し負けたことを意味する(2023年に白鶴酒造が独占輸入販売契約を取得し、販売再開)。

そして、アサヒビールのストロング系といえば「もぎたてまるごと 搾りレモン」「ハイリキ9」「スパークス」などがあったが、日本初のチューハイブランド「ハイリキ」を守るため、アルコール度数を7%に戻して、味もプレーンとレモンを残しただけで、ほかは淘汰されてしまった。

アサヒの電車広告の写真
毎年多くの新商品が出ては消えていくアルコール市場。アサヒと言えども、簡単ではないのだ。写真は「食彩」の電車広告の様子(筆者撮影)
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