「刷新感」を打ち出した企業が陥る"残念な"結末 自民党総裁選でも「刷新感」は多用されるが…
「新しい営業部長は、35歳の男性だ」
「今度の総務部長は、46歳の女性である」
このような人事が発表されることで、「わが社も変わり始めたな」という空気を作ることができる。他にも、「学歴」「経歴」「スキル」なども刷新感を出す有効な切り口になるだろう。
「当社でははじめて、高卒の社員が取締役に就任した」
「生え抜きではない、キャリア採用の社員が管理部の部長に抜擢された」
「建築士の資格を持っていない人が、はじめて公務本部の部長に就いた」
他社にとっては珍しくなくても、その会社にとって「前例のない」人事をすれば刷新感を打ち出すことはできる。
「刷新感」には期待が高まるが…
「刷新感」とは独特の表現だ。「臨場感」「幸福感」と同じように印象・感覚のことを指す。つまり「刷新されたような感覚・印象」という意味である。
「単なる印象操作か」と思うなかれ。印象は重要だ。好印象のリーダーの登場は、人々の目を引き、期待感を高める。新しい部門長が組織のリーダーになれば過去と決別した感を出せるのだ。
社員の多くは「会社が変わる」「これから成長するだろう」という期待に胸を膨らませ、生産性を大きくアップさせることもある。
メニューの中身を一切変えなくても、お店の雰囲気を変えるだけで繁盛する例もある。センスのいいパンフレット、洗練されたWEBサイトに変更しただけで印象がよくなり、売り上げアップしたり、採用で成果を出す成功例はあとを絶たない。
ただ、印象が重視されるのは、そのイメージ、雰囲気がバリュー(価値)につながるときだけだ。
メニューは以前と同じなのに、お店の雰囲気をガラリと変えただけで繁盛したのなら、お店の雰囲気をバリューと評価するお客様がいるからだ。しかし印象や感覚がバリューに結びつかない場合は、すぐに効果が薄れる。
印象のいいWEBサイトに好感を持って入社しても、実際の社風がイメージと異なったら失望し、長続きしないだろう。感じのいいパンフレットを見て注文しても、届いた商品が期待外れならお客様はリピートオーダーしないだろう。
人事もそうだ。「刷新感」という印象がバリューとして評価されるのならいい。
しかし本来のバリューが「刷新」であるなら逆効果だ。期待させるだけ「期待外れ感」が高まる。その理由は「刷新」という言葉の意味にある。
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