ドンキが「ブルーノ・マーズ」CMを流す深い理由 「まじめにふざける」企業の地道な改善の結果だ

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もちろん、こうした起用の裏側には、ブルーノが、ドンキの熱烈なファンだったという偶然もあっただろう。しかし、こうしてみると、ドンキの「ちょっとした思いつき」に見える戦略の数々は、実はかなり理知的かつ合理的である。

そもそも、ドンキは店の雰囲気とは異なり、かなり堅実かつ地道な改善を重ねてきた企業でもある。ドンキについての著作もある坂口孝則は、PPIHの広報に話を聞くと「『普通のことを普通にしただけです』といった当たり前の話しか聞こえてこない。ドン・キホーテのイメージは、むしろ過激で危うい感じがある。ただ、実際には常識的で、そして“つまらない”のだ」と書いている。筆者もドンキに関する著作を持っており、相応の取材をしてきたが、まさに同じ感覚である。

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こうした地道な改善にはどのようなものがあるか。例えば、坂口も紹介しているが、majicaアプリの中にある「マジボイス」というサービス。これは、発売済みのPB商品に対して、アプリを通じて顧客から「ダメ出し」を募集するもの。これによって、商品を少しずつ改善させていき、店舗に再投入する。

やっていることは典型的なPDCAサイクルを回しているに過ぎない。しかし、その着実な積み重ねがなされている。この仕組みのおかげもあって、今やドンキのPBは売上高2461億円を稼ぎ出すまでになっている。

さまざまなところで見られる「ドンキの堅実さ」

「改善」の仕組みは、もっと大きな店舗単位でも同様だ。特にドンキの場合、閉店した他店舗の什器などをそのまま活かして新規開店を行う「居抜き」に積極的で、スーパーマーケットやパチンコ店、果ては屋内型テーマパーク施設など、さまざまな施設を居抜きしてきた。

居抜き出店のメリットは、低コストで出店が可能、かつ、出店スピードを早められることにある。短期間でPDCAを回すドンキにとって居抜き出店は都合がいいのだ。

ドンキ石和店
かつてあった、秘宝館を居抜いたドンキ石和店(筆者撮影)

また、逆に撤退が早いこともドンキの特徴だ。例えば、かつて存在した神保町店などは、わずか数カ月で撤退した。その地域の需要になかなか応えられないことがわかったからだろう。このように、「マジボイス」に限らず、顧客からの反応を見て、素早くそれを基に改善を加えていくのが、ドンキの一面なのだ。なにも、思いつきで派手なプロモーションをやっているだけでない。

あるいは、細かい取り組みになると無数にある。

例えば、2024年の4月、ドンキではレジ打ち業務の一部に椅子が導入された。特にインバウンドが活況な店舗では免税レジの列が途切れることがなく、従業員が立ちっぱなしになってしまうため、従業員の負担が多くなっていたのだ。そこでレジに椅子が導入され、職場環境の改善に役立っているという。

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