メールやSNSで異性を誘う場合、「可愛げのある粘り」と「気味の悪いしつこさ」の境界に悩むことがある。こちらの恋愛感情が急激に高まっているときは、後者に陥りやすいと思う。
直美さんの事例から考えると、「返信するということは嫌がってはいない。ただし、深い関係にはなりたくないので、都合が良いタイミングのランチでお茶を濁している」と判断してよいかもしれない。返信をくれない相手の場合は、さっさとあきらめて別の異性に関心を持つようにし、半年以上は時間をおいてから思い出したように連絡してみる、ぐらいがちょうどいいのだろう。
昼間に会って話してみると、直美さんは隆文さんと「会話の勘どころ」が似ていると感じた。「ここが面白い!」と感じるポイントが近いのだ。テレビのカメラマンをしている隆文さんは行動範囲も広く、直美さんの好奇心も大いにそそられた。
「何度かランチを一緒にして、『飲みに行ってもいいかな』と思いました。その夜は大いに飲んでカラオケにも行き、彼の家に泊まらせてもらいました。睡眠以外のことは何もしてませんけどね」
夫を振り回した前回の結婚
直美さんは離婚の傷がまだ癒えていなかった。誠実で生活力もある前夫を振り回し続け、不倫までした挙句に別れることになったからだ。「原因は性格の不一致と言えばそれまでだけど、私がわがままだった。彼には何の落ち度もない」と振り返る直美さんに、あえて厳しいことを尋ねてみた。前夫と結婚したのは32歳。若いとは言えない年齢だ。「性格が合わない」ことぐらい事前にわからなかったのか。
「私は男性と付き合うたびに『いずれきっと別れるだろうな』と思っていました。前の結婚もそうでしたね。でも、しっかりした彼と結婚をすればこんな私もまともな人間になれそうな気がしたんです」
結婚したら自分も相手も良い方向に変わる、責任感も出てくる、と考えるのは早計だ。人の性質は基本的に変わらない。余裕と希望がある環境であれば短所を抑制して長所を生かすことができるが、我慢と不満の環境だと短所が増幅されるだけのことだ。筆者も33歳で無理な結婚をして1年後には離婚してしまったので、このことは実感している。
直美さんの後ろ向きさが伝わったのか、隆文さんはあきらめモードに入ったようだ。今までのように口説かなくなり、やや投げやりな調子で「ぶっちゃけトーク」を始めた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら