酒場で知り合った男女が仲良くなって結婚、というストーリーはアメリカ映画の中だけだと思っていた。しかし、本連載の第6回に続いて前回も、バーで出会った2人が紆余曲折を経て結婚したという実話を聞いた。お酒好きな人たちにとっては、趣味嗜好が共通する相手を探すために重要な場なのかもしれない。
今回登場してくれる福田由里さん(仮名、38歳)も、東京の住宅地近くのバーで知り合ったひと回り年下の孝文さん(仮名、26歳)と2年前に結ばれた。楽しい酒席では年齢差もあまり気にならなくなるのだろうか。
孝文さんの転勤に伴って、2人は現在、愛知県で暮らしている。名古屋駅直結のホテルの中にある中華料理店で待っていると、バカンス風のワンピースとミュール姿で由里さんが現れた。勤務先のメーカーでは作業着に着替えるため、平日でも好きなオシャレを楽しめるという。
それにしても海岸向きの服装である。由里さんの自由な内面を表しているようだ。36歳での結婚の話を聞く前に、それまではどのように過ごしていたのかを聞いてみたい。
「20代でダイビングとサーフィンにハマって、沖縄の人と遠距離恋愛をしていました。『いずれ沖縄に移住したいな』とぼんやり思っていましたね。海外でブラブラしていた時期もあります。結婚願望は小さい頃からありませんでした。今でも、結婚は紙切れ1枚の話としか思っていません。死ぬまで一緒にいられる保証はないからです。離婚をしなくても、相手がある日突然死んでしまうかもしれませんよね。悲しいことが起きるぐらいなら、ずっとひとりでいい。私はひとりでも生きていけると思っていました」
どんな恋人とも「いずれ別れる」ことを想定しながら付き合ってきたと明かす由里さん。自立しているようでいて、実は強度の寂しがりなのかもしれない。
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