「彼もバツイチで、女性関係で数えきれないほどの失敗をしていました。マメで面白いし、スタイルも良くて、イタリア人みたいな濃い顔をしているので、モテるんですね。失敗談が出るわ出るわ……。私、男性から女性関係の話を聞くのが大好きなんですよ。いいネタ持っている人だな、友だちになれるな、と感じました。その延長線上で付き合い始めたのだと思います」
やや共感しにくいエピソードであるが、直美さんは自分も含めた人間を信用できない傾向があるのかもしれない。だからこそ、愚かで非道徳的な過ちを明かしてくれる人には親近感を覚えるのだろう。
不安だった、現夫の「破滅的」生活
ただし、結婚するまでには8年間の歳月が必要だった。隆文さんは付き合った当初から結婚を望んでいたが、直美さんは隆文さんの生活態度に不安を覚えていた。
「浪費家で百万円単位の借金がありました。持病を抱えているのに度を超えてお酒を飲み、周囲の人にからんだりする。仕事はできるけれど自活ができていない。破滅型ですね。年齢も年齢だから結婚しても早く死んでしまう気がしました。それを言ったら、さすがに怒っていましたけど……」
同棲を始めると、隆文さんは少しずつ健康を取り戻していった。紆余曲折を経て、女性関係も清算し、借金も2年前に返し終えた。
直美さんのほうは、ずっと関係の悪かった母親が数年前に他界して、現状をありのままに受け止める覚悟が決まったという。この感覚は筆者もなんとなくわかる。生育環境を選ぶことはできないが、成人をした後は自分で自分を幸せにしなければならない。親のせいにしても何も始まらない。短所や欠陥をなんとか補いながら、己の責任で「大人」になるべきなのだ。親が弱ったり亡くなったりして初めてそのことに気づく人もいる。他者の助けも必要とする。
「決め手は、彼の言葉でした。『オレも君も本当の意味でのコミュニケーションが下手だよね。自分の素直な気持ちを相手に伝えられない。下手な者同士、人間関係を作る練習をしようよ』と言ってくれたんです。
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