
奈央の「最後の賭け」
六月二十日、校内合唱コンクールが開かれた。
体育館のステージで、一組から順番に合唱を披露していく。二年二組が唄う曲は「群青」の混声四部合唱──。奈央はクラスの女子に疎まれて以来、練習では蚊の鳴くような声しか出さなかった。そして合唱コンクールの本番では、自分が簀巻きにされたあたりのフロアを眺めながら、まったく声を出さずに唇だけをぱくぱく動かしていた。
上位三クラスには賞が与えられる。二年二組は入賞できなかった。“みんなの心を一つにしましょう”というのならば入賞できるわけがない。
一方で、結衣の在籍する二年八組は銀賞だった。遠くから見る限り、結衣は友達もできて、クラスにうまく馴染んでいるようだった。
木村と第六班の男子は、再び奈央と距離を取っていた。でも興味を失ったわけではない。あの放課後や、体育マットのようなことが、いつ起きるか分からない。折り畳みナイフを握っては手放す日々が続く。
青葉丘中学校の二学年には、全生徒に“生活ノート”がある。朝のホームルームで提出して、先生が一言コメントを記して、帰りのホームルームで返却される。
この生活ノートに、ひとこと日記という欄がある。その日の学校での出来事を、四行の欄に簡単に書くのだ。
最後の賭けで、ドッジボールの一件を、ひとこと日記に記そうと思った。頼りなさそうな担任の安田先生だが、何かしら対応してくれるかもしれない。




















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